苦味

{田名部祭りのお昼のひと時。むつ市}
b0111551_1441788.jpg
茗荷、山葵、蕗の薹、芥子、秋刀魚の腸などなど、いずれも子供には美味しさは理解出来ない食べ物でございましょう。
いわゆる‘大人の味’ですね。
このような食材の美味しさを理解できるようになれば、大人の仲間入りでしょう。
失礼な言い方をすれば、「何が美味しいのか分からない。」方々は、まだまだお子様ということになると思います。
チョコレートをほおばっている姿と、茗荷に味噌を付けてかじっている姿では、どちらが大人でありましょうか?
子供の頃は甘いものを好みます。大人になるにしたがい、その比率が甘味から苦味へと少しづつ変わっていきます。
子供の頃は、大人がビールを飲む姿を見て、「うまい。」といっている事を理解出来ない頃が誰でもあったと思います。
自分は親父が、自ら奥山へ分け入り、川の源流の沢へ足を運び、そこにたたずむ可憐な自然の沢山葵を採って来て、綺麗に洗い、包丁でザクザクと切り、瓶に詰め、お湯を注ぎ密閉し、冷蔵庫で冷やしたものを、晩酌のお供に「辛れ~。」といいながら、泣きながらちびちび食べている姿を見て、「泣くぐらいなら、喰わねばいいのに。」と子供心に思ったものでありました。
今では同じ事をしている、いや、それ以上の事をしている自分がいます。(自家製のわさび漬けを、熱っいご飯に載せ、そばつゆをちょっと掛け、頬張るのは本当に泣けてきます。)
我々料理界の言葉で、‘苦味は最高のご馳走’‘甘味(人口甘味料)を使って食べさせるのは三流の料理人。苦味を美味しく食べさせるのは一流の料理人’という言葉がございます。
砂糖を多量に使って、食材の甘味も持ち味も壊してしまったお料理は、いいお仕事とは言えませんね。とくに、化学調味料と人口甘味料の多用は、社会の低下につながります。
お砂糖などは出来るだけ使用せず、食材本来が持っている自然の甘味を、シンプルに食べさせる事が、良いお仕事でありますね。
そして何より、苦味ある食材を「あまい」「うまい」と、御客様に行って頂ける様になれば、料理人としては一人前でありましょう。
{日本最大級の大砂丘、猿ヶ森のヒバの埋没林。東通村}
b0111551_14421210.jpg
‘人生の苦味を知り、料理の苦味を覚える’
人生で辛い思いをして、苦渋を経験した人程、苦味を美味しいと、理解出来るようになります。その様な方は「人生辛いのも楽しい。」と理解している事であります。
子供の頃は、両親や周りの大人に守られ、甘やかされて育つため、甘いものしか美味しいと思えない。
年を重ねるにしたがい、人生の見えない壁を越えれば越えるほど大人になり、甘味から遠のく事でありましょう。
美味しいものには必ず苦味がございます。
味のバランスで一番よろしいのは、甘い・辛い・苦い・酸っぱい・塩辛いの五味がバランスよく保たれたものであります。けれども、その様なお料理は、滅多にお目にかかれるものではございません。なぜなら、味はその人その物だからです。お料理は作ったその人の味が致します。
仕事も出来て、人間的にもすばらしく、一社会人としてどこへ出しても恥ずかしくない人は美味しい。バランスの取れた味を創造いたします。でも、その様な方はそうそういるものではありません。人は未完成だから面白いのでしょう。
気性の激しい方は、塩分濃度が高い料理を作りますし、幼稚な方は甘い食べ物を作ります。味の世界は人生そのものです。
いわゆる、嗜好品と言われる物、コーヒー、紅茶、日本茶、ビール、ワイン、日本酒、焼酎。いずれも多くの方々が、毎日その中から一杯は口にし、「私はコーヒー派。」「私は紅茶派。」などなどと、それぞれ好みがございます。
どれをとっても、苦味が持ち味です。苦くなければ愛飲出来ません。毎日、口にする事も無理です。程よく苦味があればこそ、飽きずにいつまでも口に出来るのです。
そして、一番大人の味は、何と言っても、山菜であります。
雪の降らない地方では美味しい山菜を食べるのは不可能です。パック詰めや生の状態で輸送されたものは、苦くて山菜の形をしているだけで不味いものです。山菜を美味しく食べる為には朝露にぬれたものを、午前中のうちに火を入れなければなりません。自然豊かな北国でなければ無理な話であります。
{白岩森林公園。平川市}
b0111551_14453425.jpg
色々なものを食べつくし、人生経験を多く積まれた方にとっては山菜が何より本当にご馳走でありましょう。
~~牛、~~カニ、河豚、あわび、フォアグラ、キャビアなど一般的に高級食材と言われている物は、食道楽にとっては特別魅力も無いし、食べ飽きている。
食べ飽きないものにこそ、本当の美味しさは隠されております。一般的にはあまり注目されない食材が食道楽にはご馳走になりえます。
秋の精米したてのご飯。真夏の無農薬で栽培された完熟のトマトやなす。2月に岩場で採れる細かい細かいふのりや青海苔の味噌汁。冬越ししたジャガイモの煮っ転がしやポテトコロッケ。真冬の甘い大根や葱の煮物。などなど高級食材と言われなくても、一つ一つの食材は厳選されていて、理にかなった調理をすれば、必ず美味しいのです。
けれども、ブランド化はしてはいないし、商品としての花はないし、テレビには取り上げられない。その為、真価が一般的には認められていない。
人間が勝手に、ブランド化したり、値段を決めているだけで、食材には何も責任はありません。
料理人である自分にとっては、トラ河豚も付け合せのシロ葱も平等であります。葱があるから魚特有の匂いも葱で美味しく食べれるし、河豚の旨みがあるから葱も美味しい。持ちつ持たれつの関係でありますね。
自然の美味しさ(山菜・天然魚介類など)は、人間の作った食材と比べると、ずば抜けております。
‘山菜は人の世話は受けず、野鳥は人から餌は受け取らない。その風味はもっとも豊かで清らかだ。’(菜根譚・洪自誠~中国明時代)
山菜を食べなれない方や、産地ではない所、天然でもない、日が経っている、トラックで運ばれて来た物など、その様な状態で山菜を食しても、美味しさは理解できません。
大都市圏で食されている山菜は、ただ単に旬だから、珍しいからというだけで美味しくはないでしょう。山菜を食べるなら雪国の春。その中でも青森、秋田、岩手の天然ものは本当の意味でのご馳走であります。
苦味が少しでも美味しいと、分る方々が増えれば、大人の社会になる事でありましょう。
化学調味料や人口甘味料があまりにも世の中に出回りすぎております。体にも社会にもあまり良い事ではありません。お砂糖を使用する食べ物の美味しさの幅は大変限られております。
人生の苦味を出来るだけ経験して、多くの方々が苦味を甘いといえる社会になればと思います。それでも自分は飲んだ後の、ハーゲンダッツのバニラと抹茶は、まだ卒業出来ませんね。
by tk-mirai | 2008-04-15 13:09 | Comments(0)

未来のオーナーのブログ


by tk-mirai
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31