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ヴィンテージ

{1月朝の吹雪。街中でもホワイトアウト。当店前で地吹雪体験が出来ることも。}
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科学の発達なのか、経済のお陰などなのかは自分のような料理人にはよく理解は出来ませんが、コンピューターの進歩などで情報が氾濫し、二昔前までは一般の方々が見聞き出来ないようなお話や映像なども手に取るように見て知ることが出来、分からない事はパソコンに尋ね、本や評論家さんや先生に聞く事は少なくなってきたのではないかと思われます。
テレビやラジオ、新聞や広告、近所の井戸端のおば様が昭和までは情報源でしたが、今ではそれらを凌ぐほどにネットの情報量は巨大なもので、近所の情報の最先端を走っていたおば様方は路頭に迷うでしょう。
個人的にはあまり情報が有りすぎるのも情緒が掛けるような思いがいたします。
昭和の頃までは夢や希望、名人や師匠・先生などという言葉は今よりも重みがあり、より高い存在で手の届かない様なものでしたが、今では気軽に簡単に軽率に使われ、あまり価値や尊さが無いような気がしてしまいます。
昔は「狐や狸に騙された!」。幽霊や怪談話、名人の逸話なども夢や希望や情緒が有って、多くの人が信じて疑わず、神様仏様、旦那様にまでもひれ伏したものでしょうが、昨今はその様なものに対してそれほど敬虔な思いは抱かないのではないかと思います。
大雨や洪水、台風や地震、火山噴火や雷などがあれば「神の怒りだ!」「祟りだ!」「天罰が降りた!」。彗星や日食が起きれば「神のお告げだ!」「悪魔の仕業だ!」などと、先人たちは心のそこから信じて嘆き悲しみ喜び叫び、ロマンがたっぷりあったと思いますが、現代人はテレビやネットの情報から、「いついつ台風が来る。」「太平洋プレートの歪みによる地震だ。」「何年の何月何日何時何分に皆既日食がどこそこで見れる。」などと驚きも感動も無く、冷静に淡々と情報収集をするばかりで、情緒もロマンも何も無い状況に置かれてしまったものでしょう。
知識や情報によって、夢や希望を破壊されてしまったようで、知らないほうが面白みが有ったのかも知れませんね。
去年も災害の多い年でありました。
情報収集も発信もそれなりに出来たし行ったであろうと思われますが、その中でも回避が出来ない深刻な事態になった災害・人災が多かったと思います。
我々は日々秒単位で、ネットやテレビの情報から天気や災害などを見聞きし、情報からおよその対処をして、備えをしたり促したりいたしますが、それでも防げないのは、まだまだ自然の巨大さ凄さにまったく太刀打ち出来ないからでしょう。それは今も昔も変わらない事と思います。
{日本海側深浦産天然ヤガラ。}
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ワイン用語で‘ヴィンテージ’と言う言葉が使われます、元々の語源からワインだけに使われる単語のようですが、今では色々な方面で活躍する言葉になっているようです。
ジーンズやクラシックカー、楽器やオーディオなど年代物を表すのに丁度いい表現なのでしょう。
ワインに使われるのですから、アルコール類。ウイスキーや焼酎、日本酒にも今は使われています。
綺麗にひね香も無く熟成された5年~10年ものの日本酒はすばらしい味わいです。アルコール類の頂点と言っても言い過ぎではないと思います。
ヴィンテージはその年、年代の作りがいい、出来がいい。希少価値が高く良品に使われる言葉であります。
「ビックヴィンテージ!」「当たり年!」などとワインでは表現されます。
その年の気候風土、季節の変化が葡萄の生育に最適で、実りがよくワインの味わいに絶好の条件が揃ったときに用いられる言葉であります。
あまり語られたり話す方はお見かけいたしませんが、ワインと同じように全ての食材に当たり年・外れ年、ビックヴィンテージがあります。
料理を生業として20年弱経ち、気候や天候のデータみたいなものを記憶するようになって20年以上に成りますが、どんな年でも必ず一個や二個は「今年のこの食材は出来がいい。」「今年はこの食材は美味しい。」という食材があったものです。ある程度台風や長雨があっても、どこかの季節はまあまあで、その時期に適した出来がいい食材があったものです。
ところが去年は何一つ出来が良い食材が有りませんでした。今まで経験の無い一年を過ごしました。
料理をしていて良い食材に巡り合えないというのは心持は良くありません。楽しいものでは有りません。
自分が青森で料理屋を商っている理由の一つに、変化に富んだ季節と食料自給率が高く多種多様の繊細で濃厚なうまみたっぷりの個性的な食材が時期時期にそれぞれ青森にはあるからです。
去年に関していえば、全ての食材の出来が悪かったものです。品質が悪く量が少ないのに、景気の上向きとやらと品薄で値段は平年の2~3割アップの状態が続きました。
その様な状況は一般の方々にはなかなか理解はしていただけないもので、多くの食に関わる仕事の方々はお値段に反映出来ず利幅を減らして苦労していることであります。
テレビや新聞で「野菜が高値。平年の2倍以上。」と少数の野菜について謳ってくれても、魚介類やその他の食材についてはあまり取り上げてくれることはありません。野菜類の高いなどは天然魚類の高いに比べたらなんでも無いことです。
{弘前市の蔵人(くらうど)。ビックヴィンテージの熟成酒。H17、2月出荷純米吟醸とH20、2月出荷純米。}
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去年の始めは、一月から関東でも大雪が降り、青森では湿った雪とその後の雨。日によって寒暖差が大きく、雪が降ったと思えば、次の日は雨。降るときの一日の降雪量が多く、雪が降らないで気温が上がる日も多い。それでいて、春先の温度が低く、五月は中旬から急激に気温が上がり、月末には青森市では28℃まで気温が上がり、我が家の津軽錦(希少種金魚)は急激な暑さでご臨終。六月一杯は高温が続きました。
自分は経験の無い初夏の暑さで、六月から七月始めまでほぼ毎日汗だくで、家に帰ってから水シャワーを浴びていて、平年であれば七月から八月に掛けて数回水を浴びる程度が五月六月で平年の三倍水を浴びておりました。。
七月中から落ち着いた気温になり七月最終週は暑くなったものの、八月四日からは雨が続き気温が上がらずその状態が十一月中まで続き、ここ十年~十五年では経験の無い長い秋(温暖化の影響で年々春と秋は短くなっているのに)でした。
十一月に入っても気温が下がることは無く昼は17~18℃、夜になっても7~8℃位で平年より5℃以上の高温が続き、十二月に入った途端、大雪に見舞われ十二月としては統計上では平年の2倍の降雪量という状態です。
その間に、広島で土砂災害。全国的に長雨があり京都や札幌では冠水。御嶽山の噴火。東京での大きな雹など、去年は災害が一年を通じていたるところで有ったものでしょう。
青森の食に関わる話では、一月二月冬の気温の不安定さから、酒造りが期待が持てず、春先の低温と初夏のいきなりの高温で山菜の芽吹きが悪く不作。竹の子は珍しく花が咲き山菜取りの皆さんからは「竹の子が花咲いてるから今年は不作だ。冷害になる。」という話が出ていて、五月後半の急激な高温で農家からは「作物が高温障害を起こして花がやられた。」といいます。津軽平野のジュンサイも寒天質が薄く味も平年より悪い。夏場の低温と長雨で、20~30年のベテランスイカ農家からは「今までで、一番スイカの出来が悪い。こんな年は経験が無い。」と聞くことも。
海のほうでは、魚介類全体の水揚げ量と種類が少なく、特に夏のスルメイカが平年の五分の一ほど。夏場のカサゴ・ホウボウ・鯒・イシダイなども姿を見せず、日本海側から津軽海峡に掛けてのマグロは量が極端に少なく、揚がっても身質が悪い。けどれども景気の影響で東京の引きが強くて高値。平年から比べると買値で1k五千円くらいはマグロは高かったものです。年中平均して水揚げされる水蛸も量が少なく痩せ気味。津軽海峡物のアンコウも平年の倍以上の値段で取引されていたものです。
{津軽の郷土料理アンコウの共合え用に鮟鱇肝をする。}
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ニュースやワイドショーで災害を多く伝える年は、食材の出来は悪いものです。
当店では、お客様に「今年は気候の不安定さから全ての食材の出来が悪いです。その中からいい食材を選び高値でも仕入れて料理はお出ししています。けれども、今までの美味しさではないです。ワインに当たり年などがあるように全ての食材にも当たり年があります。今年は全てが外れです。不作です。物が悪い割りに高値です。これから温暖化と乱獲、人口爆発と世界的日本食ブームで年々食材は枯渇し食材の不作・高値の年は増えると思います。今年はその様な不作年です。そんな年もあります。その様なヴィンテージだと思って、今年の味をお召し上がり下さい。」とご理解をいただいておりました。
加工食品・肉類、小麦粉料理、工場生産食材・養殖魚などを常食していればその様な変動には気付く事は無いかもしれません。その様な食生活の方々が圧倒的に多いと思われます。
自分のようにほぼ毎日食材を仕入れ、山に入って山菜を取ったり、畑で路地野菜を収穫したり、天然海産物などを料理していると、出来不出来は一般の方々よりは敏感に成るものです。
今年も、今のところ去年と似た天候が続いております。「去年のように食材の出来が悪くなるのかも知れないな~。」と心配しております。
近年で、食材の出来が良かった年は、2012、2009、2005、2004、2000年という感じです。
照らし合わせてみると、ワインのビックヴィンテージの年に重なるところもあるようです。勿論、地域地域により一概に全て出来がいいというわけではありませんが、日本ワインの出来がいい年は大体そのほかの食材も出来がいいという風に考えても間違いはないと思います。
後はただ、その業界業界が一生懸命宣伝情報発信するかしないかの差であり、ワイン業界は欧米の売り文句が引用され営業がお上手なので、際立って情報が得やすいという事だと思います。いい時は情報発信しますが、悪いときは黙っているのが相場のようです。ボージョレーヌーボーのように葡萄が不作の年でも、毎年ビックヴィンテージと販売業者は歌い文句を作る場合も有ります。
人参やジャガイモ農家が「今年はビックヴィンテージだ。!」とか、イカ釣り漁業者が「稀に見る当たり年!」とか、焼酎メーカーが「歴史的グレートヴィンテージ!今が買い!」、納豆屋さんが「100年に一度の出来栄え!」、お味噌屋さんが「21世紀最高の偉大な造り!」などと宣伝している姿は見たことはありません。
若かれし頃は、単発的な短い距離や狭い範囲でしか物事を捉えたり考えたりしか出来ないものと思われますが、経験を積むにしたがって、考え方だけではなく、食べ方も広く深く大らかに、出来不出来に関わらずその年を味わうことを覚えると食の深みが増すものだと思います。
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{青森駅横で夜の雪灯篭祭り。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’も御覧ください。
ライブドアーブログ‘世界に誇れる青森の郷土料理’もご覧ください。  
by tk-mirai | 2015-01-30 19:19 | Comments(0)

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