テロワール

{日本一美しい変化に富んだ形の青森県。海に囲まれ、山・川・湖・平野が豊富です。}
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テロワールとは、「土地」を意味するフランス語が語源との事ですが、よくワインの薀蓄に登場いたします。
同じ葡萄品種であっても、土地が変われば環境が変われば味わいは別物になるということで、多少ワインを飲んでおられる方々なら、その意味合いはご存知のことと思います。
ワインはその土地の環境・土壌の産物を飲むという様なものでしょう。
その土地の気候風土。雨の量、日照時間、土壌の質、標高差、斜面勾配などなど自然条件が変われば、その土地に適した葡萄品種、不適切な品種があり生育も出来も味も様々変化するというようなことでしょうか?
隣同士の畑であっても、起伏が違う、日の当たり方が違う、土壌が変わるなど、まったく別物の評価が与えられたりもして、長い歴史の中でここからここまでの区画(畑)は、好条件で1m離れただけでも、同じ評価はされない。などとフランスでは土地の研究が進んでいるものでしょう。
ですから、数%の良質なワインの場合は日本酒に比べ醸造技術よりも、土地の環境のその年の気候条件などがワインの味に深く根強く関係していて、葡萄の栽培に適した土地を持っていることが美味しいワインを造る絶対条件なのかもしれません。
テロワールという言葉は農産物に使われるものですが、海産物・畜産物などの食材、空気・水・自然景観などに関してはどうでしょうか?
美味しい料理を作る上で食材の質は絶対条件です。
自然が作り出す産物=食材にとってワインと同じく環境条件が味わいを左右いたします。
20年ほど飲食業に携わって来て、毎日のように料理を作り続けて感じてきたことは、自分の生まれ育った青森という環境が、美味しい料理を作り食べるという条件に類まれな環境を備えていて、他に比べ有り余るほどその条件を満たしているという事でしょうか。
食量自給率は約115%(目安としてのデータ)。
魚介類・畜産・米・野菜類・果物類の割合が約20%ずつと、他県では有り得ないほど非常にバランスがとれ、統計に出ない山菜類・家庭での自給野菜も豊富です。
{どこでも大人気の大間産本マグロ。全体にバランスよく脂が乗った個体は少ないものです。}
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青森県は日本海・太平洋・津軽海峡・陸奥湾という四つの海を擁しております。
日本海・太平洋と両方の海がある都府県は青森だけです。それに加え環境の異なった津軽海峡・陸奥湾という海も抱えております。青森県の周りは海流がぶつかり合う地域で餌が豊富です。それだけで、美味しい魚介類が多種多様に生息していることが明確です。
日本海側は繊細で味の濃い比較的小型の白身の魚が多く、太平洋側は赤身・青魚が多く大型で大味の魚が多いものです。
日本海側では高級魚の赤むつ・アマダイ・本アラなどが上がり、太平洋では目抜け・前沖鯖などの脂の乗った魚などが水揚げされます。
津軽海峡は流れが速く、日本海・太平洋が交差するところでもあり、海流が交わり餌も豊富で津軽海峡の‘マグロ’が特に有名なのは食物連鎖の上位に立つマグロが、イカや鰯などを追いかけ北上し、津軽海峡一帯が彼らにとって最高の食事処であり、身質が最高潮に達するからであります。
マグロだけでなく、‘イカ類・青魚類’、‘平目’に代表される‘白身魚類’も豊富で、その底辺を支える‘海藻類’も多種多様に生育しております。海藻類が豊富と言うことは‘ウニ’や‘アワビ’などの貝類も豊富と言うことです。
陸奥湾は津軽海峡とは対照的に、穏やかな海で多くの河川が流れ込み、豊富なプランクトンが多いことからそれを食事とする‘ホタテ’が昔から特産物として有名であります。外海のホタテに比べ小粒ではありますが、繊細で濃厚で甘みと味わいが濃く、贔屓目抜きにして味わいはナンバーワンであります。
そのホタテと同じ環境を好む‘フジツボ’も珍味として名を轟かせ、大きいものではLL玉の卵の大きさぐらいにはなるでしょうか。酒蒸しなどにするとウニと蟹と海老を合わせたような味わいです。
そのほかむつ湾内では春のトゲクリ蟹・シャコ・素魚・なまこなどなど変わり者が多いものです。
日本海・津軽海峡・陸奥湾・太平洋一帯で、季節にもよりますが鯛・鮭・鱒・カレイ・鰤・鰆・鱸・鮎並・鰊・ホッケ・ハタハタ・カサゴ・オコゼ・穴子・メバル・ソイ・アンコウ・鰯・鯖・烏賊・水蛸・鱈などなど挙げたらきりが無いほど多くの魚介類が水揚げされます。
湖では十三湖の名産‘黒いダイヤ’の異名を持つ‘十三湖蜆’。ほぼ他県に出回らない十三湖岩牡蠣などなど。小川原湖では天然ウナギ・蜆・白魚・ゴリ・沼海老・藻屑蟹などなど水産資源は実に豊富です。
水産資源の漁獲量は常に上位で、天然物がまだまだ多種に水揚げされる事が貴重でしょう。昨今は天然の魚を食べたことが無い方々が多いと思いますから、ダントツで一人当たりの海産物の消費量ナンバーワンの青森県人は贅沢なものです。
{野趣あふれ後引く美味しさの馬肉。}
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畜産類については、乳牛の生乳は年間約七万トン。その九割が県外に出荷されており、青森県外のミルク事情を支えているものです。
鶏卵の生産は45%を東京都へ出荷されていて、安定した品質と安全性から高い信頼を受け、東京の方の5人に一人は青森県産の卵を召し上がっているようです。東京で消費される二割が青森県産卵です。
食肉牛に関しては県内各地で生産されており、全国の大会で多くの受賞も獲得しており、代表銘柄は倉石牛・八甲田牛・田子牛・十和田湖牛・東通牛などの黒毛和種に加え、赤肉の美味しさが珍重される短角牛の十和田牛・八甲田牛の美味しさはこれから益々評価されることでしょう。黒毛和種の種雄牛第1花国の功績は大きいでしょう。宮崎県の多くの牛が残念な事故により姿を消した時、青森県から第1花国の凍結精子が送られたりもしているようです。
豚肉の生産量も全国有数で、八戸の港に飼料コンビナートがあることが要因のようです。青森県産ニンニクを与えた奥入瀬ガーリックポーク・木造の津軽愛情豚などなどは品質レベルが高く、獣臭を感じさせない柔らかく味のある肉質です。
地鶏もシャモロック・鴨ではバルバリー鴨などが高い評価を受けて、ほとんどが県外に出荷されています。
それから冬の下北の猪肉、後はなんと言っても肉類の王者は金木や車力の馬肉が美味しいですね。
{自給率にはカウントされない自然の恵み。天然剥きタケ。}
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農産物は、東西が対照的で、西の津軽平野は米と林檎。東の南部は果物と根菜類が特産物です。
元々青森県は藩政時代大きく東西に分かれていて、気候風土・風習・食文化・方言・感覚などなど、まったく違う文化圏で、津軽地方はだだっ広い平坦な平野で米どころ林檎どころで、気質も大らかで見栄っ張りで博打打が多く気忙しい者が多いものです。南部は起伏が激しく寒暖差があり、果物栽培と根菜類に適した土壌を持ち、気質は真面目でのんびりおっとりした方が多く津軽人とは好対照です。
それぞれ地域地域で環境を充分に配慮してそれに見合った農産物を生産していて、野菜類も果物類も多種多様です。
津軽平野の5月~10月の日照時間は東北一。東京の20%も多いようで、それが米どころ林檎どころの所以でしょう。それ以外にもメロンやスイカや葡萄や野菜類も多種多様に生産されています。
南部はサクランボ・イチゴ・洋梨・桃・葡萄・ブルーベリー・ごぼう・長芋・ニンニクが有名です。その多くが成績の割りに知名度が低いのが残念です。
青森県全体で見ると、林檎・長芋・ニンニク・ごぼう・カシスの生産量が全国一で、大根・カブ・西洋梨が三位。サクランボ・にんじんが四位。十位以内の産物はメロン・ジャガイモ・夏ねぎ・米・なめこなど。トマトは7月~9月の期間東京市場でシェアはナンバーワン。五個に一個は青森トマトです。
{大気が澄んでいても端から端までは見渡せない平坦な津軽平野。}
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その様な多種多様の食材を輩出できる要因は、青森という場所が自然環境に恵まれた世界でも有数の立地条件が備わっていることです。テロワールの成せる業でしょう。
数ヶ月雪に覆われる津軽地方ですが、その御蔭で水不足も無く、保存食の発展、郷土料理の多種多様さを生み、雪解け水が山・平野・川・湖・海に多くの恵みをもたらし、春から秋に掛けての陸地の産物が有り余るほど豊作です。一年を通して天然魚介類は多種多様に豊富です。
自然も豊かで空気・水も美味しく、四季の移ろいが体でダイレクトに感じる事が出来、自然景観見所も多様で温泉も泉質が様々あり豊富です。
人口集中地域の都市圏の周りは、雪が無くて過ごし易い様でいて、その分水不足、夏場が暑すぎて農産物海産物が干上がったように生産が落ち込むようです。一年を通して安定して食材が豊富とは言えないでしょう。
食料自給率が100%超えているのは北海道・青森・秋田・岩手・山形だけです。
江戸幕府が出来る前に文化圏が日本海側に集中していた訳がそこにあるでしょう。
旅をしても味が保てれるのは肉類と大きいマグロ位なものでしょう。その他の食材は旅をすると、生まれた場所から離れると味は急激に落ち込みます。
食材がそこで生まれそこで生活するのはその環境が適材適所だからであります。
どこでもドアでもあれば可能かもしれませんが、今のところ輸送が発達していても収穫・水揚げされて半日以上経過した食材は、味も香りも半減いたします。
食材はとにかく鮮度が一番の味わいです。畑から収穫して数時間以内のものは甘みが強いものです。市場・業者を通すとその様なものは食べれません。魚介類は活締めしてすぐに卸し、その日に食べるのがもっとも理想的です。魚は熟成より鮮度が美味しさに比例します。
{戦国時代に城が築城され南部の地形を上手く現した三戸城からの眺め。平野がコンパクトで起伏に飛んだ地形。}
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青森を出て食べ歩けば歩くほど、青森の食文化を掘り下げれば掘り下げるほど「青森ってすげ~な~。」と自然と感じるようになったので、自分の店のスタイルを‘mede in 青森’に決めました。
仕事で料理を始めた頃は、「日本料理(関東・関西料理)をベースに世界中の料理を融合した料理を作ろう!」と考えていたものですが、作れば作るほど混ぜ物では「美味しいものは生まれない。」と言うことが分かり方向転換をいたしました。
それから自分が幼少から食べてきたものを見直し再構築し、郷土料理を紐解き、食材を探求し、食材が生まれた環境、受け継がれる料理が生まれる背景・歴史・地域性などに興味を持つと、青森県。特に青森市が食べるものが豊かである。ということを常々感じます。青森県で生産・収穫されたものが半日以内に集まる集積地です。海産物のセリが一日二回あるのは珍しいことでしょう。
青森市内に世界一の縄文遺跡があり、「移動性の狩猟生活で国家など形成されていない。」という縄文の固定観念を覆し、その時代以前から豊かな食文化と生活が営われてきた事が分かってきました。
青森県は古文書や歴史書は存在しなくても、目の前に遺跡や城郭跡、創建がはっきりしない神社仏閣などが至る所に存在します。
日本で一般に認知されている歴史は戦争の略歴に過ぎません。
皆さんも普段生活していてご理解いただけると思いますが、歴史は戦争だけではないと思います。庶民の普段の生活・文化・風習も歴史です。
青森の歴史・文化・風習・食材・料理・地域性・人柄・気候・風土・祭り・自然などなどに接していると、根底に食料が豊富なことが第一で、その為、御裾分け文化・争わない・温厚・純粋・郷土愛・のん兵衛の多さ・博打打・向上心の欠如・仕事に対する執着の無さ・営業努力という言葉が当てはまらない・サービス業は発達しないなどなどが平気で存在するのは「明日食える保証がある。」ということを常に認識できるからと感じます。
金に物を言わせなかった太古の時代から近世まで、食料の豊富さからか古文書・文献を必要としなかったのではないかと思います。
自然や豊富な食材に囲まれていることが一番の贅沢で、美味しい食事をする心得でしょう。
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{津軽平野のシンボル。岩木山と林檎の花。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’もご覧ください。
ライブドアーブログ‘世界に誇れる青森の郷土料理’もご覧ください。
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by tk-mirai | 2014-06-02 22:16 | Comments(0)

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