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外食のすすめ2

{もうそろそろ祭り時期です。製作中の青森ねぶた。}
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前ページ外食のすすめ1の続き

料理屋を家業にしている者からお勧めできる料理屋の楽しみ方です。
料理屋の楽しみ方というのはお料理だけではありません。
とある何代も続く料理屋の店主さんが「料理屋は大人のディズニーランド。」とおっしゃっておりました。
料理以外のところにも、大人でなければ楽しめない色々な要素が沢山ちりばめられた趣味・教養の宝庫の遊び場です。
料理屋にとって料理とは、野球で例えれば、攻撃面では四番。守備面では先発投手というところでしょうか?
けれども、野球は4番とピッチャーだけでは出来ませんし、面白くもありません。
一番もいれば七番バッターもいる。エースもいれば中継ぎ抑えワンポイント、審判も観客もグランド整備員もアナウンサーもいます。
それぞれが役割分担があり、自分の仕事をきっちりこなすからこそ全体的に面白味があります。
ですから、いろいろ食経験・人生経験をして、「高くても満足度のあるものを・・・。」と飲食店の最後の砦である料理屋で食事の時間を過ごすのですから、料理以外にも着目し楽しんでいただくのが、より一層料理屋での時間の過ごし方が充実することでありますし、料理だけを楽しんでいるより数倍面白いでしょう。
一般的には飲食店といえば、料理ありきでそればかりに目が意識が行きがちです。お皿の中だけを見てしまう方々も多いかもしれません。
料理屋をやっているものからすれば、一番時間も手間もとられるのは料理ですが、料理以外の事、そのほかの要素、お客様に時間を楽しんでいただく、喜んで頂くために、料理以外のことにずっと神経を費やしているものです。
その中から分かりやすい所を大まかにご紹介いたしましょう。
{ぬくもりと肌触りのいい木地の津軽塗りの面々。}
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料理がある程度しっかりしている。店の内外の清掃が行き届いている。什器備品の整理整頓が綺麗にされ清潔感がある。店のスタッフの身なりが衛生的で笑顔で迎えてくれ挨拶やサービスが適度に心地いい。という基本的なことが出来るということを前提にして、まず最初に料理が盛られているお皿を見てみましょう。
「料理が美味しければ皿なんてどうでもいい。」という方も居られるかも知れません。
では、料理屋に行って紙皿に紙コップで料理やお酒が出てきたらどうでしょう?
料理屋の者は、その季節、料理、量、質などなどのバランスなどを考慮しながらお皿を選択し、お料理を盛り付けています。
「器は料理の着物。」と先人は例えましたが、美味しい料理をより一層美味しく、見た目にも食欲を掻き立てるために器選びは重要です。
ここに世界一美味しいライスカレーがあるとします。そのカレーを世界一汚いお皿によそいます。美味しいと思うでしょうか?もう一つのお皿には、味はごくごく普通のライスカレー、でも世界一綺麗なお皿に盛ります。どう感じるでしょう?
料理屋は、器を選ぶとき「寒い時期だから、ぬくもりのある温かみのある厚手の土ものにしよう。それを蒸し缶などでさらに温め料理が冷めないようにお皿を準備しよう。」「蒸し暑い夏だから、薄手の白地のお皿に料理の邪魔にならないような涼しげな古染付けにしよう。それをもっと涼しげにするため冷たい氷水にくぐらせ料理を盛ろう。」「この料理はとてもシンプルだから器は赤絵の綺麗な形のものを使おうか、それとも織部の緑をアクセントに使おうか・・・。」「御椀はメラミンなどのプラスチック類ではなく、お客様が手にし、口に触れるものだから肌触りよく優しい口当たりの木地の漆塗りのものにしよう。」などなど料理に合わせて器に気を使うものです。
その様に器にお金を掛け、気を掛け、一品一品の料理に合わせて形や色合い厚みや様子の違う器を使い分けるのは和食の料理屋以外にはほとんどお目にかかりません。
洋食屋さんは白を基調に、丸か四角の大小のお皿ばかりのようです。格上のレストランにお邪魔しても、ナイフやフォークはいいものでも、お皿にはふちに模様が入ったりお店のロゴが入っている程度に感じます。
名もない貧乏陶工が、世界トップクラスの磁器や陶器を沢山量産した中国や朝鮮でも、店内に手の込んだ琺瑯彩や白磁の大皿や大壺を飾っていても、実際お料理に気の利いた器を使っている中華料理屋さんにはまだ会えません。
和食で言えば、織部・備前・有田・信楽・美濃・九谷・萩・京などなど器について造詣が深まると、またより一層料理屋を楽しめることでしょう。
{大正から昭和初期に掛けて中国に輸出用で製作されたという久谷焼きの類。}
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アルコール類はいかがでしょうか?
アルコールの苦手な方はどうしようもありませんが、お料理に合わせてお酒を選択するのもいいものです。
お料理とお酒が結びつくことでお料理もお酒もより一層美味しく楽しめます。
お酒屋さんに任せっきりのお店であれば、ちっとも面白くないお酒のメニューが並んだりしているお店もありますが、お店のスタッフがお酒を把握していれば、料理とのバランスや限定酒やメニューにないワインなども勧めてくれて、その時期季節に合わせたお酒をセレクトしてくれることでしょう。
(料理とお酒の関係についてはまた次の機会に程ほどにお伝えいたしましょう。)
店内に飾ってある掛け軸や額ものはどうでしょう。
もしも、お客様のお席のすぐ脇に、色気たっぷりのアダルトなポスターや赤や青のツララの刺さったような頭のヘビメタの歌い手さんのカレンダーなどが飾ってあればいかがでしょう?
その様なものを拝見しながら、姿のよい鮎の塩焼きやプリプリの活締めのヒラメのお刺身などを食べるような雰囲気でしょうか?
茶室や庭、個室があって床の間でもあれば、そこに季節にあわせた掛け軸や花が活けてあったり、もしもその様な床の間がなくても、店内のあちこちに気の利いた書や絵などの額ものが時期や雰囲気に合わせて飾られているのも日本料理屋の気遣いです。
その様な額ものを料理の合間などに拝見するのも一つの楽しみ方です。
当店のような最近の店であればほとんどないことですが、何代も続いている老舗の料理屋さんであれば、「おおっ!」と思うような名画や書などにも会えるでしょう。
{和食器の基本、織部焼き。}
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箸や箸置き、グラスやコースター、お絞りやお絞り置き、お盆やナプキンなどはどうでしょう?
気の効いたお店であればそれらもなかなか趣味が行き届いていることでしょう。
グラスなんかもクリスタルで揃えたり、盃なども作家物でしょう。
ちょっとしたカウンター割烹にお邪魔したりすると、店名入りの麻のナプキンや一人一人絵柄の違うナプキンなども準備してあり、お店によってはそれを洗濯して一枚一枚アイロン掛けをしたりと手間暇掛けていることでしょう。ごく普通のナプキンだとクリーニング屋さんにも出せますが、お金が掛かるというよりは、いいナプキンになるとクリーニング屋さんには任せれないということもあるものです。
お客様が座られる椅子や座卓、座布団などはどうでしょう?
パイプ椅子だったり、造りが木がむき出しで、座る部分は小さく、座っても高くて足が届かない、座りにくいし降りにくい、十分も座っているとお尻がヒリヒリするような椅子で食事をしたらどうでしょう?
薄っぺらなで、いつ洗ったのかもわからないようなシミだらけ、穴も開いていて綿もちらほら覗いている、そんな座布団にお座りになるのはいかがなものでしょう?
様々なお客様がお座りになるのですから、常に椅子なども綺麗に掃除をしなければいけません。座り心地も良く安定感もいい、硬くもなく軟らかくもなく、足も両足がしっかりついて、座りやすく立ちやすい、座ってテーブルとの高さも高くもなく低くもない。座布団も座椅子もその様な按配。その様な椅子や座布団になると一つ数千円では用意は出来ません。
そんなちょっとした身の回りを見るのも料理屋ならでわの面白味があるでしょう。
そのほかにも、接客、会話、雰囲気作り、職人さんやスタッフなどの仕事ぶり、料理の間合などなど、見て感じて楽しむ部分が沢山あるのが料理屋です。五感で味わえる唯一の娯楽場です。
{津軽半島小泊産天然山椒の実。この時期爽やかな味わいが煮付けや佃煮にアクセントになります。}
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それから、行きつけの馴染みのお店を自分の中で持って置くことをお勧めいたします。
若いうちは、テレビ・雑誌・ガイド本に振り回され、次々新しいお店を回ったり開拓することもあるかもしれませんが、それでは美味しいものは食べれませんし、飲食店は1~2回でそのお店の実力を判れるものではありません。
お客様自身、体調や感覚、経験・趣向などに波があるように飲食店も多少の波はあるものです。
お初の時にその波の上で経験するのか下で経験するのかは、縁とタイミングなどの兼ね合いもあります。
本当に実力のあるお店は、安定感が抜群です。前回はは90点だけど今日は70点ということはありません。でも、その様なお店は少数派でしょう。
時にはこの季節、「あれを食べたい。今日はこれが食べたい。」などと思うことがあると思います。
その様な時は、やはり馴染みのお店が頼りになります。我儘も聞いてくれるかもしれません。
お店側もお馴染みさんであれば、おまけしたり、メニューにないものを勧めたり、損しても料理を出すこともあるでしょう。
自分なんかだと返ってお客様にメニューを決めていただいた方が有り難いのですが、大抵1~2回の利用で「あれ、これ・・・。」とお店に注文するのは、お客様自身が気も引けるでしょうし、お店側もどんなお客様か把握も出来ないのに、その方の為だけに料理を揃えるのは難しいでしょう。まだまだ職人さんは頭が固いのも多いですし、職人さん個々の料理のスタンスというのもありますから、聞き入れる度量があるかどうかも関わってくるでしょう。ですから、浮気性で次々店を変えるのではなく、馴染みのお店を何件も持って置くことが、より外食を楽しめることでしょう。
馴染みのお店であっても、召し上がりたいものは前もってご注文することをお勧めいたします。
急にお店に行って、「あれ食べたい。これ作って。」とご注文しても、店にあればいいですが、無い時は返って店側がお客様に失礼に当たってしまいます。お店側はお客様のお役に立ちたいと思っていても、それで、「毎回料理が同じ・・・。」と飽きてしまうこともあるかもしれません。
料理作りは買い物も仕込みも時間がかかるものですから、ご要望のものは事前にご予約することをお勧めいたします。
飲食店を楽しむ為に、少しでもこのような事がお役に立てれば幸いです。
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{沼地がいたるところに点在する木造町。この時期ジュンサイやメロン、スイカなどが特産です。}
ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’もご覧ください。
ライブドアーブログ‘世界に誇れる青森の郷土料理’もご覧ください。
by tk-mirai | 2013-06-26 13:44 | Comments(0)

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