富幸(不幸)の会

{特別に設えた、年越し料理約二人盛り。}
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「美味しいものを知れば知るほど不幸になる・・・・。」
20代後半の頃、料理を仕事として「これはちょっと寂しいなぁ~・・・。」と思ったことは、年々食べる楽しみが少なくなっていく事。食べれるものが減少していく事。食のレベルを下げることが困難な事。食べる楽しみが失われ、人生の最上級の道楽が奪われていく様に感じる事でした。
小学校の時、母親に連れて行ってもらった街場の老舗ハンバーグレストランの最後のデザートに出される銀カップに入ったバニラアイスの美味しさがいつもときめいていた事。中学校の時に認識できた、国産和牛を出してくれる焼き肉屋さんのカルビーやヒレ肉の美味しさ甘さに驚いた事。高校の時に、親父に連れられ体験した、小料理屋さんの真カレイの唐揚げのおろし餡かけやキンキンの煮麺の美味しさに感動した事などなど、若かれし頃は、外食して食べて感動したことが年に何度かあったものです。それが今ではどうでしょう・・・。この前食べて感動したのはいつだったものか・・・・。
料理が好きで、食べる事が好きで、飲食を追求し、自分の思い通りの食材を仕入れ、好きなように料理を作り、時には高額のお足を出し、都市部の業界でも名の知れた料理屋さんレストランにお邪魔して食べ歩く事も何年も掛けてやっていくと、終いには「何を食べたらいいんだろう?何を食べたら満足するのだろう?」と悩ましい日々を過ごさなければならなくなってくるものです。
年々食欲も減り、選択肢も狭まるにつれ、満腹感より満足感を欲するものです。質に関係なく安いが売りより少量多種で高額な料理でも精神的満足感があれば納得するものです。
添加物が入ったものは具合が悪くなって食べれないし、旨味調味料というものも出来れば遠慮したい。大量生産のもの、チェーン店・フランチャイズ店の物は選択肢として出ることは無く、養殖魚はまったく無理だし生魚やお肉類も敬遠気味。ラーメンもお蕎麦も少し距離を置きたく、麺類は煮麺か冷麺(冬は熱くして食べる)ならまだ食べれる。粉料理はおやつにしかカウントされないし、生菓子は手が伸びず焼き菓子が専門となってしまう。残ったものは、見た目が地味な料理や白いご飯にお味噌汁、季節の漬物と季節の菜っ葉類、そして納豆か鱈子か筋子、津軽の塩辛類。それからホッケや本シシャモなどの干物類を繰り返し食べるぐらいしか選択肢が無くなってきてしまうものです
そうなってくると、巷で話題になっている商品やお店にはあまり興味は沸かず、自分でやるか、信頼できる料理人に頼んで作ってもらうしか、方法が無くなって来るものです。
{陸奥湾産極上活鮟鱇8キロ。鮟鱇の共あえ用に。}
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添加物の入っていない料理や旨味調味料も極力控えた料理、既製品や養殖魚を使わない料理などを選択するととてもお値段が張るものです。着飾った料理より地味な料理のほうがずっとお足が必要です。
貧乏人なので、出来れば低予算で済ませたいものです。
300円前後の牛丼や100円のハンバーガー、コンビニ弁当や駅前に軒を連ねる居酒屋さんや昔で言う2級酒・数百円のワインなどで済めば、満足出来れば、それに越した事はありません。
ところが飲食は昔美味しいと感じたものも、味覚や食べる意識、飲食経験を向上させ経験値を上げると進化してしまうと過去を美味しいと感じず、昔の味覚には後戻りは出来ません。
昨日まで、シルクのパンツに数万のカシミヤのセーターを着ていて、予算がなくなったから「まあ仕方ないや・・・。」とコンビニの300円のパンツに1000円しないセーターにお色直しが出来ても、体内に入れる飲食は一度憶えた舌や記憶、感動・美味しさを否定する事はなかなか出来るものではありません。
安いに越した事はありませんが、安いもので美味しいものなど存在せず、自分を満足させるものはどのように頑張って選択しても少々お足と手間がかかってしまうものです。
そのお足を稼ぐ為に、美味しいものを食べる為に、自分を説得し、満足させる為に、人一倍苦労をしなければいけません。美味しいものを食べる為、余計に働かなければいけません。自分を言い聞かせ働き続けなければなりません。
美味しいものを食べて「ああ~、幸せ!」と感じていた時期は何処に行ってしまったのか。美味しいものを食べると「は~。また不幸に・・・。」という様にどうしてなってしまったのか・・・・。
{白トリュフ用に用意したワイン。ボーペイサージュはその妖艶さと土臭さが合うのではと・・・。ビオンディ・サンティ04は飲むには早かったけど、前もって何時間も前に抜栓していたので、そのポテンシャルの高さはすばらしい。バローロボーイズ・パオロスカヴィーノ01は開けたては美味しい。ヴァイラ97は弘前のシェフから譲っていただいて。ヴァスコサセッティ94は青森市のアルさんから助言いただいて。}
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それを解決する方法を数年ほど模索した時期がありました。そしてその打開策として今現在進行形の一大事業が、‘富幸(不幸)の会’の立ち上げであります。
自分の我儘なのですが、同じ感覚の方を出来るだけ多く作ろう。同じ感覚で飲食を楽しもう。という様な取り組みです。
「この人なら・・・。」という方にお声を掛け、自分の考えを申し出て、「こんな事してみましょう。」「あんな事してみましょう。」と提案して、ここ1~2年で少しずつメンバーも増えて来たと思います。
メンバーに加わっていない方でも、その流れに巻き込んでいる方も居ります。
自分は最初はそのまま‘不幸の会’としようとしたのですが、現幹事が「不幸の不を富のふにしましょう!」というアイディアを出してくれましたので、‘不幸の会’改め‘富幸の会’となりました。
今現在お集まりの方々は7~8名。今までに何度か面白い試みを開催いたしました。
最初は3人でスタートし、お一方が「美味しい茶色いお酒を飲んでみたい!」という事で、お初は‘グレンモーレンジ マディラウッドフィニッシュの会’。モーレンジのウッドフィニッシュシリーズのマディラ・シェリー・ポートを近くのジャズバーで飲めるので、「行きましょう。」と自分が誘ったものです。前々から「このマディラウッドフィニッシュはレベルが高いな~。」と思っていたので、味わっていただきました。
ある方の提案で「日本のワインを色々味わいたい。」という一言で‘日本のワインの会’。自分のお店にある入手困難な日本のプレミアムワインを味わっていただきました。
現幹事が全国の日本酒を調達するのに秀でているので‘静岡のお酒の会’。これは米所では無いのに、なぜ静岡は名の知れた日本酒蔵が多いのか?それは富士山の伏流水によるものだろう。じゃあ、色々集めて飲み比べしましょう。7人で、四合瓶8本。一升瓶5本位。もっとあったかも・・・。
「もう一度、日本ワインを・・・。」というお声に‘日本のワイン会2’。8人で、ワイン14本。全部を空には出来ませんでしたが、13本はクリアーしても、皆さんまったく悪酔いせず、日本ワインのクオリティーの高さを楽しんでいただけたと思います。
{イタリア・ピエモンテアルバ産白トリュフ。1キロ78万円。画像のは100グラムほど}
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そして、12月には‘アルバ産白トリュフの会’を開催いたしました。
出来る事なら、弘前のイタリアンのシェフにお願いして、料理もワインもご馳走になる予定でしたが、忙しい為スケジュールが合わず、自分のお店で開催する事になりました。
なぜ白トリュフに目を付けたかと言うと、自分が30前後の頃、毎日「何食べたらいいのだろ?」と悩んでいる時に、お客様の一人に本職でも無いのに食に秀でていて、、勿論ご自身でも料理をなさるだろうし、世界中で飲食の経験もあるだろう。けれどもそんなこと一言も言わず、どこかの高級レストランに「行って来た!」などと言う自慢話もする訳でもなく、淡々と料理話をしてくれる方が居られました。「この方なら何かアドバイスしてくれるかも・・・?」とイタリア在住なので「現地イタリアで美味しいものは何ですか?これは食べた方がいいというものはないですか?」「自分の目標の一つに、英語・イタリア語・フランス語・中国語を憶えて、ガイド無しで料理屋巡りをしたいのですが・・・。」と質問すると、「んん~。そうね。あなたなら、色々食べ飽きてるでしょうから・・・・。白トリュフは食べてみて。しかもシンプルな料理よ。ゴテゴテして無い料理で、茹でただけのシンプルなパスタとか、リゾットとか。味というより香りよ。是非、食べてみて・・・。」
という一言に、黒は食べる機会が時々あり美味しいと感じたことは無いのですが、「この人が言うなら嘘じゃないだろう。食べる機会を作ろう。」とあるお客様をお誘いし弘前のイタリアンのシェフに無理やりお願いしました。「青森帰ってきてから使ったことは無いけど、未来さんが言うなら・・・。」と我儘を聞いてくれ、2年前に始めて味わう機会をいただきました。
お誘いしたお客様も自分と同じく「黒は別に・・・。まあ白も期待せず、食事を楽しもう。」とまったく同じ様に思っていたようですが、予想に反して白トリュフ料理に感激し、「また、食べてもいいです。」という事で、「富幸の会でやりましょう。」という運びになりました。
賄いで中華やイタリアン、洋食物は作って食べたり、和食以外も食べ歩いていても、自分は和食専門。しかも、白トリュフは一度きりしか味わった事が無い。
白トリュフだからといって、自分のところでイタリアンの真似事をしても意味も味わいも無いですから、和食にイタリアンの要素を添加しお料理を整えました。
前々から「イタリアンと和食を融合すると、受けは良く商売はいいだろう。」と思いつつも、自分はその様な何だか分らない料理は店では「やらない!」と決めていたのですが、‘富幸の会’はいつもと違うスタンスで料理を作れるので、少しだけその掟を緩めました。
{真鱈田楽と白子塩焼き白トリュフ掛け。田楽味噌にはバターを忍ばせ洋風に。}
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その妖艶な香りを想像しつつ、和食に少しだけイタリアンを添加したお料理を整えました。
・大鰐産シャモロックと常盤産卵で茶碗蒸し 白トリュフ掛け
・木造産つがる愛情豚バラ茹で肉刺身醤油掛け 白トリュフ掛け
・津軽海峡産真鱈田楽白子塩焼き 白トリュフ掛け
・青森市旭日屋製麺特製無かんすい麺に無塩バターと生卵に出汁醤油 白トリュフ掛け
・青森市産バルバリー鴨炙り 白トリュフ掛け
・黒石市石沢さんのちのレーズン胡桃パン
・イタリアチーズ バローロ搾りかす葡萄漬けチーズ・黒トリュフ入り山羊チーズ・ゴルゴンゾーラ入りマスカルポーネ・甘口青かびバザイオ。
合わせるワインも個人的に選んだものと、弘前と青森のイタリアンのシェフのアドバイスを仰いでそれ相応のものをセレクトしました。
今回把握できた事改善点は、白トリュフは渇いた料理でなければ白トリュフの香りを消してしまう事。
自分は汁物好きで、瑞々しい料理が好みなのですが、白トリュフは湿気を嫌う事、水分のある料理には愛想も無く素知らぬ顔をすることを今回の会で勉強になりました。
「水を必要としないイタリアンならでわだな。やはり、その食材が生まれる環境に適した料理でなければな~。」と感じる事が出来ました。
‘富幸の会’のいいところは、普段のお店での制約がなく、そのお題に合わせた自由気ままな料理が出来る事。食の欲求の次元の高いレベル同士の方々と食話が出来る事でしょう。
‘富幸の会’の一つの狙いは、出来るだけ食に興味のある仲間を増やし、より良い食文化を進化させる事。
メンバーの皆さんは、ご自身の味覚が基本形で、テレビやマスコミ、評論家・ガイドブック、何とかポイントなどにも左右されず、自分の美味しいと思うものを素直に「美味しい!」と言える方々ばかりです。
食に対してフラットに正当な評価が出来るし、食を通して経済や文化を勉強でき、色々な物事に無駄はなくシンプルに向き合えるので、意識も向上出来、適正な生産者・生産物を選択するので僅かばかりですが社会のレベルアップにも繋がるでしょう。
ご興味のある方は是非ご参加下さい。ご一報いただければ、何かの縁が出来るでしょうか。
飲食に並々ならぬ興味があり多くの予算は飲食に当てている事。ポケットマネーで食べる事など厳正な審査基準がありますが、時間を楽しむ事が一番の目的ですかね。

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{青森市内のここ十日ほどの雪は多いですね。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’もご覧下さ。
ライブドアーブログ‘世界に誇れる青森の郷土料理’もご覧下さい。
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by tk-mirai | 2013-01-08 21:13 | Comments(0)

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