人気ブログランキング | 話題のタグを見る

調味料

    ~営業のお知らせ~
  9月18日(日)は営業いたします。
  よろしくお願い致します。 

{五穀豊穣を願う岩木山お山参詣。津軽地域最大の秋祭り。}
調味料_b0111551_18252472.jpg

野生のお猿さんがガス代の前に立ち、元栓を開けフライパン片手に火をつけ、油をサラッと垂らして何かしらの食材を焼きながら火加減を覗き見、腰に手を当てながらお箸で食材をひっくり返し、お塩や胡椒などの調味料などを塩梅よく振り入れ調理する。
そんな時代が来ることがあるものなのでしょうか?
二昔前、映画‘猿の惑星’を見ながら、「こんな面白い映画を作る人は先見の目があるな~。何となく有り得ないとも言えないし、昔の映画の方が迫力あるな~。」などと思ったものでした。けれども食事風景は一切無い映画で‘硬い’映画といえるでしょうか?
なかなかハリウッド映画で食事風景というものは出てくることは少ないものです。(ゴットファーザーは出てきますね。)
昔の日本の映画などは、ちょくちょく食事風景が色々な形で出てきて、そこでの会話や団欒を重要視したり、ちょっとした場面場面の間に食事風景を挟んだりして、食文化を大切にしている様子が窺い知れます。
寅さんでおばちゃんが「寅ちゃん。あんたの好きな芋の煮っ転がし作ったよ。」という台詞は場面に花を咲かせるし、人柄や人情を物語るものです。
料理をするという文化は人間の優れた才能と思います。
他の動物たちが包丁を活用したり、火を操り鍋釜を振り、食材や調味料を合わせ思い思いに調理する事は、今のところ自分の知っている限りでは人間以外ではお会いしたことはありません。
アライグマが食べ物を水で洗う事が調理とは思いませんし、どこかのお猿さんだったかが温泉か何かの塩泉で芋を洗って塩味を付けて食べている。というのも調理とは言えないでしょう。
人間には他の動物が出来ないすばらしい能力を持っているのに、それを活用していない人が沢山いるのも不思議なものですし、食べなきゃ死ぬのに食べる事よりほかの事にご興味が多い方々が沢山いらっしゃるのも、これまたおかしなものでしょう。
人が調味料を活用し始めたのは、いつのころからかは自分のような凡人には定かではありませんが、一番最初の調味料は塩であったと思われます。
ですから多くの国々では塩をベースに調理をいたしますが、日本料理・中国料理などのアジア系は醤油や味噌を好んで活用いたしますね。
勿論、醤油や味噌を造る過程で塩が使われていますが、醤油・味噌・魚醤などの醗酵調味料は塩に無い多くの旨み成分が含まれており、塩のみで味付けするより醗酵調味料を活用した方が深みや味わい奥行きや食べ飽きさせないいくつもの美味しさがあるものでしょう。
ですから我々日本人がよく洋食のコースなどを食べた後に「味噌汁かしょー油ラーメンが食べたい。」というのは、フレンチやイタリアンに無い普段の日本の食事の中に醤油や味噌などの醗酵調味料の旨みが身に染み付いているから何となく物足りなく感じるものなのでしょう。
{当店で使用している津軽海峡の塩と石巻の塩}
調味料_b0111551_18281821.jpg

どこからどこまでを調味料として考えるのかは食文化、お国柄にもよるでしょうか?
西洋では味付けは塩がベースの為、そこにスパイスや油、ヴィネガー・香草などを上手く活用いたしますね。
日本で油が調味料として位置付けられるようになったのも、西洋文化の影響でしょう。
昔の日本人は「調味料は味付けするもの」と認識していた為、油を調味料として考える事は無かったものです。油は味ではなく炒めたり揚げたりするものに限定されていたかもしれません。
モッツァレラチーズとトマトとバジル(カプレーゼ)にオリーブオイルをかけたり、焼いたパンやサラダにオリーブオイルをかけるような食事スタイルが広く浸透した事によるものでしょう。
青菜のお浸しや煮つけなどを作るより、サラダやムニエルにした方が調理も早いし、それを食べ慣れて油を口にする事を好むようになったことも有るでしょうか。
よく「油が旨み」と解釈されておられる方々がいらっしゃいますが、油は旨みではなく香り(油は香りを吸収する性質)であり旨み成分は水分に浸透する物なので、油に旨みはほとんど無いということは調理化学で実証されている事であります。それだけ、香りというものは美味しさの味覚部分に大きな影響力があるのでしょう。ですから、油がお好みの方はその香りとまったり感がお好みなのかもしれませんね。
異国にお住まいの日本人の方が「日本の家庭の冷蔵庫を見れば調味料の数がすごいでしょう。醤油や味噌は当たり前だけどそのほかに麺つゆや焼肉のタレ、ソース・ケッチャップ・マヨネーズ、何種類かのドレッシングにポン酢、オリーブオイルやヴィネガーなどなど沢山有るでしょう。ヨーロッパでは有り得ない。日本人が食に執着のあるのが分るよね~。」と話されていたのが、日本の冷蔵庫の中が当たり前の自分には興味深く感じました。
{お醤油はヒゲタさんの薄口と秋田の湧水醤油慶太郎。}
調味料_b0111551_18292817.jpg

日本料理で言う基本の調味料といえば、塩・醤油・味噌・砂糖・酢、それに付随して味醂・酒、今では各種の油、ゆず胡椒・ポン酢などの合わせものも調味料に数えるでしょう。
料理で調味料は欠かせないものであります。それはなぜなのでしょう?人間以外は調味料は必要としないのに人間は調味料が好きでたまりません。
そのまま食べて美味しいものなら調味料は付けなくてもいいのでは?と思いますが、調味料は不可欠です。
日本料理の調味料の位置付けはどんな具合なのでしょうか?
自分の経験上果物類は別にして、そのほかの物は味を付けなければ飽きる事。それは人間の生命維持に塩分やその他の調味料に含まれる栄養成分が不可欠な為、それを体が欲するのではないかと思っております。
活締めのプリッとした白身のお刺身もそのままよりも醤油を付けた方が美味しいものです。
上等のお肉でも、サッと焼いてから純大吟のお酒と薄口醤油を垂らしたほうが食欲をそそるものです。
美味しい美味しい自然の昆布とカツオのお出汁も塩味を付けた方が旨みが倍増いたします。
透き通る黄金色に光る煮干と昆布のお出汁も濁ってもお味噌を溶いたほうが芳醇で味わい豊かなものです。
日本料理の根底にある考えは、‘鮮度抜群の旬の食材をシンプルに調理する事’であります。
ですからここ一番の食材であれば、そのまま下処理して生食しても充分美味しい物です。けれどもその食材をそれ以上に美味しくする為、食材の持ち味を消さない食べ飽きさせないために最小限の調味料を加えます。
その辺が日本料理固有の、世界広しといえども日本料理にしか無い類まれな文化であります。
そのほかの異国の料理は足し算仕事。食材に油や調味料を足していってソースで食材をコーティングして味を付けてしまうものが多いようです。食材よりもソースの方が主役と考える事も有るでしょう。料理というものは食材・素材を食べているのであって調味料を食べているわけではありません。調味料を食べたいのであれば、塩やオリーブオイルだけを舐めていればいいでしょう。「こんなに調味料を入れる必要があるのかな~。」と思うお料理に出会うことがあります。調味料勝ちの料理や調味料を必要以上に乱用したお料理は品格を損ないます。質の低下した食材やあまり褒めらない素材であれば調味料を多用する事になるでしょう。
日本料理はその食材から必要ないものだけを抜き取り、最後に最小限調味料を補います。
茹でたり、灰汁抜きしたり、水に晒したり、魚を骨や皮を包丁で抜き取って身だけにしてしまう技術などが引き算仕事といえるでしょうか。
「灰汁もその食材の持ち味」といって灰汁抜きしない方もいらっしゃいますが、食べれば灰汁抜きしたもの(完全に抜いているのではない)としないものでは美味しさに歴然とした違いがあるものです。
{お味噌は何種かを季節や素材によって使い分けます。}
調味料_b0111551_18303592.jpg

当店で使用している調味料は、今はある程度固定されたものを利用しています。勿論それ以上に美味しい調味料があればそれに移行するので、お初で気になるものはその都度試してみるものです。
よく「この塩は高い!」などと言ったりしますが、マグロや牛肉が高いなどと比較すれば調味料の高いなどは微々たる物ですし、一回には使いきれるはずも無いのですから、家庭でも調味料ぐらいは健全なつくりをした上等なものをご用意する事をお勧めいたします。
当初は青森県内の食材を使った店だから「調味料も全部青森県産にしよう。」と探し回ったものですが、納得できるものは少ないですし、味醂や酢は青森県産では無いものでした。
お塩は、3種類利用しています。
海だらけの環境の青森の天然活締めの魚を使う為、まずは海流が交差する津軽海峡の海水100%平釜製法‘津軽海峡の塩’。お塩としてはかなり高額ですが海峡の天然の魚を塩焼きするのにはこれしか無いでしょう。それから、三陸石巻湾の海水の窯焚き製法‘伊達の旨塩’。漬物などに使用したり水塩を作ります。後は肉類を塩焼きする時は岩塩(メキシコ産)を利用しています。
醤油は色々毎回のように探し回り使ってみますが、加熱して美味しい醤油と生でなければ美味しくない(加熱調理すると美味しくなくなる)醤油などが有り、煮炊き物や加熱調理が多い為、今は‘ヒゲタ醤油の薄口’を利用します。当店では濃い口醤油はまず使いません。いい食材に濃い口醤油の香りと味は‘調味料勝ち’の料理になって食材の持ち味を消してしまうからです。お刺身用のお醤油も純米酒に紀州の梅干と南茅部の献上昆布を入れて煮出し、アルコールを飛ばして薄口醤油と追い鰹をして作って‘刺身醤油’を作ってしまうので、天然醸造の美味しい生醤油なども利用していません。どうしても濃口醤油がお好みの方には秋田の‘湧き水醤油慶太郎’をお出しします。
{味醂は福来純三年熟成。そのまま飲んでも美味しいみりんです。}
調味料_b0111551_18313883.jpg

お味噌はその時期時期の気候や天候温度などを見ながら使い分けます。冬はコクがあり甘味が強い白味噌がいいですし、夏場はあっさりして辛口の赤味噌がいいでしょう。ですから時期によりブレンドしたりブレンドの比率を変えたり、食材によってお味噌は使い分けします。この頃はカネサさんの無添加‘津軽海峡冬景色’の味噌と‘津軽名水仕込み無添加味噌’を汁物に利用します。‘ね太郎’のこし味噌は田楽味噌などを仕込むのに利用します。そして生食して美味しいお味噌は秋田の小玉醸造さんの年一度の限定予約販売‘寒仕込梵天’であります。夏には身欠き鰊と生キュウリに付けて食べるとお酒が進みます。
お酢は、2種類。料理屋さん御用達の‘千鳥酢’。味付けに多く利用します。一般のお酢に比べればかなり高めですが、それなりのいい仕事をするお店になると大抵この酢を使っているのを目にしますね。それから、岐阜内堀醸造さんの‘長期熟成米酢’くせが無くサッパリしていて、隠し味程度に酢を使うときや〆鯖等の〆仕事に利用します。
味醂は岐阜白扇酒造さんの‘福来純三年熟成本みりん’一種類です。3000円弱と味醂としては最高峰と思われますが、この味醂は自分の料理には欠かせないものです。名の知れている料理屋さんでも使っているところは少ないでしょう。大抵は料理屋さんでも800円くらいの味醂が相場を占めていますね。料理が趣味で食に執着のあるお客様は当店でこの味醂を見て「同じの使ってる。これ高いですよね~。」と言って喜ばれます。ベースの出汁を作るのにはもちろん、ポン酢を仕込むのにこの味醂一本を煮きり、本橙手絞り果汁と薄口醤油を一本づつ加えポン酢は仕込みます。
油は三重の九鬼産業さんの‘純正太白胡麻油’今は1.8ℓで2000円ほど、と薄口の‘純正胡麻油’どちらもいいお値段ですが、食材にそのまま掛けて生食しても胸焼けしない美味しいものですし、天麩羅に使ってもくどくなくサラッとして美味しいものです。揚げる食材よりも油代の方が高くつきますし、お客様にはそれが伝わらないかもしれませんが、職人気質のいい仕事をする天麩羅屋さんなどはこれしか使わないものです。それからちょっとした揚げ物などには‘なたね油キャノーラ’も利用します。
当店で使用している主要な調味料はそんなところでしょうか。
自分が思う料理の理想系は、‘まあるい味’。食材のいいところだけを引き出し、調味料は素材を補う程度、味わいは甘い・辛い・酸っぱい・苦い・塩辛い・旨みが全て均等なバランスで整ったものがいいでしょう。
{酸味の使い方次第では料理の幅を色々変化させれます。}
調味料_b0111551_18333891.jpg

砂糖類はデザート類には使っても料理にほとんど使いません。お砂糖の甘味はいい食材の自然な甘味を消してしまいます。卵料理、卵焼きには味付け程度、卵豆腐や茶碗蒸しにはふっくらさせる為、味付けとは違う砂糖の性質を利用して隠し程度に入れます。お砂糖を使ってもスッキリさせたいので、自分は上白糖ではなく純度の高いグラニュー糖を利用します。デザートの内容によっては‘和三盆’も利用しますね。味醂や砂糖に無い美味しさを求める時は、青森県産のアカシヤやリンゴの蜂蜜も料理やデザートに使う事もあります。
お店に料理酒というのは有りません。
料理を作り続けて、食材や調味料の質を上げていった結果、お酒を料理に入れるのはお酒の味も香りも食材の味わい香りを邪魔してしまう事が分り、ほとんど料理にお酒は使いません。旨みが必要な時は福来純味醂を入れるので、お酒はいりません。使うといったら刺身醤油を作るとき、肉類を照り焼きする時ぐらいでしょうか。肉類には味醂を使うと肉質が硬く締まってしまう(味醂は食材の繊維を締める性質がある)ため、お酒を利用します。と言っても専用の料理酒は無いので、お酒のショーケースに入っている純米吟醸や純大吟を利用します。どうせ料理に入れるなら美味しい酒でなければ料理も美味しくなりません。よく「料理酒は何でもいい。」とおっしゃる方がいますが、そうではないことを安いお酒は反って料理を不味くする事を覚えておいてください。
それから鍋磨き用に、スーパーで売っている一番お買い得な醤油を使います。こちらは色々な混ざり物が入っているので料理に使う事はありません。銅鍋を磨くときは醤油で磨くと綺麗になります。銅鍋をお持ちの方はお試しになるとよろしいでしょう。
{油の最高峰太白胡麻油。オールラウンドに使える優れもの。サラダやスパゲティーなどにもいけます。洋物を作るときにオリーブオイルのくせが苦手な方にお勧めです。}
調味料_b0111551_17445860.jpg

調味料というものは食材・素材と違って見えにくいも物です。
その為、いい調味料を使っていてもお客様に伝わりにくいかもしれません。見えないものだから、調味料はお買い得な合成物を使うお店もあるでしょう。その方が安上がりだしコストダウン・手間も省けるので商売上は利用しやすいものです。
コストと手間を安く、商品を安く売り込み、ロスが出ないようにするためには、添加物と旨み調味料は不可欠なものとなっております。
天然の昆布と鰹節などを使って丁寧にお出汁を摂るより、お水に直接魔法の白い粉を振った方が仕事も楽です。
添加物まみれの既製品や加工食品が大勢を占める現状では、多くの方々が合成された味に成らされてしまっているようです。中毒性があるのか化学調味料や添加物になれると、それが入っていないと美味しいと感じなくなってしまうようです。
当店にはまったくありませんが、化学調味料も使い方によっては、便利な道具でしょう。けれども、いい食材には不向きです。その食材の持ち味なども殺ぎ取ってしまいます。なんにでもそれを使ってしまうとみんな同じ味なってしまい、何を食べても同じ味です。
化学調味料や添加物などの乱用はいかがなものでしょうか?体に影響は無いでしょうか?
人は食べるものによって体が形成されます。
アレルギーの増加、子供の肥満率の増加、卵子や精子の減少、体力の低下、切れる子供たちの出現などなどは食べ物は関係ないでしょうか?
出来れば食生活は新鮮で栄養豊富で無添加の化学物質に頼らないものがいいでしょう。
何だかんだと薀蓄並べていても、一番の調味料は‘水’であります。水が最大の調味料で一番の出汁です。野菜や魚を洗う、出汁を引く、灰汁抜きをするなどお水は不可欠です。蛇口を捻るだけで美味しい水が飲める環境にある地域は恵まれた環境です。塩素たっぷりの水道水で食材を洗っては香りもなくなってしまいます。その様な面で豊かな食材に恵まれ、‘日本一美味しい水道水’という称号を受けている青森にいることはありがたいことであります。
調味料_b0111551_17443899.jpg

{お山参詣の囃子方。幼少から体に染み込んでいくのでしょう。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’もご覧下さい。
by tk-mirai | 2011-08-30 22:33 | Comments(0)

未来のオーナーのブログ


by tk-mirai
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31