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失敗

{黒石市浄仙寺内の紅葉}
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落語家・古今亭志ん朝さんの‘芝浜’のマクラ部分で「いろんな方とお付き合いしていて一番気が楽な方は、やはり、しくじりの多い人ほど気が楽ですね。・・・・・どこか人間に隙があって面白い・・・・・。しくじりすぎてもいけませんが・・・・。」と話されております。
自分自身お店を開店して、最初の頃は全てにおいて完璧を心掛けていたものです。
どうせ未完成の自分が思う程度ですから、たかが知れておりますが、料理を作るにしても、お店で営業していても、もしかしたらプライベートでも完璧と言うか理想を求めていたかもしれません。
ところが歳を重ねるうちに、‘完璧ほどつまらないものは無い’し、‘完璧な人間など存在しない’し、その様な方が居られるなら一度お会いしたものだと思うものであります。
自分がお店を始めるにあたって、一番心掛けていた事は、「絶対失敗は許されない。ちょっとでもミスしたら目の前のお客様は二度と来ない!」と考えていたものでした。
その為、他人の責任にはしたくないし、何か失敗があったときは全て自分に責任を負わせたい。
その結果、「誰も雇わず一人っきりでやろう。」と開店して数ヶ月は全て一人で営業していたものです。
けれども、あるお客様に「食うものは美味しいけど、男一人が何も話さないでムスムスと目の前で料理を作っていても、酒は旨くない。」「このお店にはなんだか花が無いね。」と目の前で言われ、自分の中では「目の前で料理を作っているところを見てもらえば、余計な会話など無くてもお客様は分ってくれる。」「料理屋の主役は味なのだから、美味しければ満足していただける。」「人を雇わない分いい食材が買える。」と思っていたので、「そうなのかな~?」と何日も考えあぐねていたところ、「あんた顔が疲れているね。」とお客様に言われたのが決定的で、「こりゃ、ダメだ!」と思い。女性の方に働いていただくようになったものです。
その頃は睡眠時間3~4時間。勤めていた頃もそんなもので自分にとっては普通の事で、慢性的な睡眠不足など板前家業には付き物と思っていても、隔離された厨房と目の前にお客様がいるのでは条件が違うもの・・・。
食べ物屋は美味しいだけでは経営は成り立たない事。などなど・・・。
それから、一人きりで料理屋をしても自分の持っている能力の三分の一も仕事が出来ない事がわかり、他力本願と言う事が分ったものでした。
それでも、自分のミスは許さなかったし、スタッフのミスも許す事が最初は出来なかったものです。
スタッフのミスであろうと、自分のミスであろうと、お客様同士の話のずれからの嫌悪感も、お店の中で起きた全ての事はそこの責任者である自分のミスであるものでしょう。
{津軽半島の天然薄ヒラタケ}
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自分がお店を開店してもう少しで7年になりますが、その中では多くのしくじりがあったものです。
20代後半までは、失敗する事が恐怖だったのかもしれません。
今でも毎日の様に多くのしくじりはあります。
それは仕込みの段階でのしくじり、営業時間中のしくじりなど様々です。
仕込み中のしくじりは何とかカバー出来るものです。
けれども営業中のしくじりはなかなか挽回出来るものではありません。
今までに、「これは二度とやってはいけない!」というしくじりがあります。
その頃は開店2~3年目の事で、まだまだ自分のミスを許せない頃の出来事でした。
お世話になっているお客さまが「大事な方を連れて行く。」とご予約頂き、ちょうど珍しくお店が込み合っている時にそのお客さまがご来店し、「明日は大事な仕事があるのでお酒はいただきません。冷たいお茶をいただけますか?」とご注文いただきました。
お電話のご予約でその方がそばのアレルギーがあることを確認していたのですが、当店でご用意している冷たいお茶は基本的に‘そば茶’。アレルギー体質の方も居られるので、ウーロン茶も用意はしているのですが、その時は込み合っていて、てんてこ舞いでその事が頭から抜けていたのもあるのですが、間違ってそば茶を出してしまったものでした。
そのお客様は気付かずそば茶を飲んでいたのですが、御代わりを頂戴した時、「あれっ!!そう言えばそばがアレルギーなんだ!」と自分が気付き、お客様に話すと、「ええっ!!どうしよう、アレルギーの薬ホテルに置いて来ちゃった!」とソワソワし出したのですが、「いいわよ。氷で薄まっているし、何かムズ痒いけど、大丈夫よ。」とおっしゃってくれました。
けれども自分は、‘これは許されない!自分の責任だ!’と思い、「今日の御代はいただけません。もしも何か病院に行くようなことがあればご連絡下さい。お支払いいたします。」と言うと「う~ん。気にしないで・・・。」と何とも無かったかのようにお客様との会話を続けておりました。
それでも、心配で心配で一週間くらいそのことが頭にこびり付き、「どうなっただろう?どうなっただろう?」と眠れない夜を過ごしたものです。
{夕立に濡れた下風呂温泉郷}
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それから、別のお話でもう一つは、秋の旬真っ盛りのキノコの時期に、自分で山へ分け入り、サモダシ・ナメコ・ムキタケ・ブナハリなどなど沢山のキノコを採って来て、「これぞ津軽ならでわ、ずっぱど茸汁!」と自信を持って、カウンターの目の前のお客様にお出ししたとき、そのお客さまがきれいに茸汁を食べ終わってお椀を自分が下げるその時、お椀の中に小さな渦上の針金らしきものがひとつだけ入っていたものでした。
それを見た瞬間自分は、「ええ!!」とお客様にも聞こえる声を出してしまいました。
自分には時間が止まったような感覚に追われ、「あれは何だ?もしかして金タワシの破片?何ていう物をお客様に出したのだ!!」と自分の失敗ばかりを自分に投げかけ、まず第一にやるべきお客様に謝るべきことをしなかった。と言うより自分の度量が狭すぎてその時は何も言えなかった。目の前にいるのに・・・・。
そのお椀の事がずっと最後まで頭に突き刺さり、その後は自問自答しながらその日は営業を続けてしまいました。
帰ってからも「何でだ?何であそこにあれが入ったんだ?」などと自分の失敗を攻め立て、また眠れない夜を5日ほど過ごしたものでした。
天然物のきのこはいくら洗っても完璧にゴミは取れるものではありません。洗っている最中に他のゴミも入るかもしれません。けれどもそれは店側の言い訳であります。
そんな事が、たまたま数ヶ月の間に続き、そんな時に毎日アルコール類の配達をしてくれる酒屋さんが何も話をしていないのに、何とはなしに、「お前はもっと人を許す事を学びなさい・・・。」とボソッと言って、お酒を届けてくれました。
その頃は、そういう風に見えていたのでしょう。
その言葉がまたまた眠れぬ夜を演出してくれました。
けれども、そのお客様方はそんな事は無かったかのように、またご来店頂き、ご一緒にお酒を飲んでくれたり、変わらずお付き合いしていただきました。そして、一言も自分のミスを指摘しませんでした。それが一番辛いのですが・・・・。
それからは、召し上げれないものアレルギーなどは入念にチェックしているものです。
{青森市内で取れた栗を仕込みます}
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誰でもしくじろうとして失敗しているわけではないでしょう。
ミスは、恥であり、社会的にもいい評価はいただけないでしょう。
けれども、ミスを少なくする事や未然に防げる事もあります。それは、多くの失敗を経験し、ミスの中から学んだ知識の予習・復習で培われるものでしょう。
今の社会は一つの失敗も許されないかのように、ミスを騒ぎ立てる傾向があるような気がいたします。
けれども、自分の失敗を平気で許してくれるお客様を見ていて、その方々とお話をしていて、多くの失敗談を話していただき、自分以上に多くのしくじりをしている様で、失敗や挫折がその後の自分に大きな肥やしに成る事を教えていただきました。
自分でも多くのしくじりを経験するにしたがい、自分自身が未完な事も相まって、人様のしくじりも‘人間らしくていい’と感じるようになりました。
自分のお店では勿論しくじりは出来るだけしないよう心掛けていますが、例えば、自分もよそへ出掛けてラーメンの中やケーキの蓋を開けたら髪の毛が入っていたとか、お酒を飲みにいってそこのお店のスタッフに服にお酒をこぼされたとか、オーダーしたものと別な商品だったとか、色々有りますが、あまりよそでの事は気にしなくなったものです。
勿論言わなければならない事に付いては、「これ、大丈夫ですか?」とお店の方に話すのですが、その後のアフターがしっかりしていればミスとも思わないものです。逆に情が沸いて通うものです。
ある旅先で、お土産売り場の試食を連れの者が「これ美味しいか味見して?」と本人は食べず自分に寄こして、確認もせず口に入れたところ、「カビてる!」と思った瞬間飲み込んでしまい、‘まあいいか、死なないし。カビを食べた経験もあるから・・・。でも、お店の人には言ったほうがいいよな・・・・。’と思い、「すんません。これカビてると思いますよ。自分は食べちゃったけど、新しいのに換えた方がいいですよ。」と売り子の若いお姉さんに伝えて帰えようとすると、すぐにそこの責任者らしき人が飛んで来て呼び止められ「大丈夫ですか?大丈夫ですか?」と盛んに自分を攻め立てる姿に‘自分もこうだったな~。’と考えていると「ここの住所と電話番号が書いてありますので、何かあったらお電話下さい!病院行く事があったらご連絡下さい!」と言われ‘旅先だから病院にはいけないけど・・・。’と思いつつも「いいですよ。大丈夫ですよ。カビには慣れてますから・・・。」と繰り返し話しても何度も誤るその姿に‘かえって悪い事したかな~?’と思い、買う予定ではなかったお土産類をそのお店で何千円も買ってしまったりするものでした。
今では大きなしくじりはあまり無いのですが、毎日のように、「このお客様との会話では、もっといい話し方はなかったか?もっといい表現はなかったか?もっと、話しやすい雰囲気作りは出来なかったか?お客様の趣向に合わせてもっと料理を換えれなかったか?」などなど毎日のように反省点は在るものです。
もしかしたら自分が気付かずお客様が「この料理は失敗してる。」「この店を選択したことが失敗だ!」と思われているかもしれません。
20代前半は親方に「失敗は成功の元だ!」とよく言われたものです。その様に育てていただいた親方には感謝しております。
志ん朝さんが言うように、しくじる方が人付き合いもいいかもしれません。
自分の担任だった先生は「今の教師は学があるだけで、失敗も挫折も知らない。そんな者が人に物教えれるか・・・。」とつい先日も酔っ払いながら語っていました。
映画界の金字塔‘寅さん’もしくじりが多い方でしたね。
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{八甲田山中。ブナの紅葉は清々しいものです。}


ヤフーブログ‘食の桃源郷青森’もご覧下さい。
by tk-mirai | 2010-10-19 17:52 | Comments(0)

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