人気ブログランキング | 話題のタグを見る

煮麺(にゅうめん)

~営業のお知らせ~
   7月18日日曜日は営業いたします。
   翌19日月曜日お休みいただきます。
   宜しくお願い致します。 

{シンプルな煮麺、七味を振って。見た目は食欲をそそらないかもしれませんね。}
煮麺(にゅうめん)_b0111551_17301542.jpg

先日「何を食べても満足感が無い。どうすればいい?」とある方に聞かれました。
自分からすれば(そうですか、もうそこまで来ましたか?)と言う感想なのですが、ご質問には答えなければならないので、「大丈夫、時間が解決してくれるでしょう。自分も5年以上前に経験しましたので・・・。」とお答えしました。
料理を職業とする方以外から、このような発言が聞かれる事は滅多にありません。
料理を職業とする方々でさえ、そんな感覚を経験出来る方は数少ないものでしょう。
我々料理人、特に料理屋の板前さんは朝7~8時から夜中12~1時まで厨房に閉じこもりきりで、寝る時間以外はひたすら料理を作り続けているものです。
好きでその道を選んだ者でさえ、その様な生活を10~20年以上続けていれば、作るのも食べるのも飽きてくるものです。
毎日毎日、来る日も来る日もまな板の前に立ち続け、包丁片手に朝から夜中まで料理を作り、味見のしっぱなし、お客様にお出しする生の状態の食材も味見し、料理してからも常に口の中にポイポイ入れては噛んだり味わったり、時には適度な空腹でなければいけないので、味見をしても噛み分けたりしても吐き出したりもいたします。
仕事の為、外食も多く近所はもちろんの事、県外に食べ歩く事になっても3泊4日で7~8件の飲食店、4~5件のお菓子やケーキやその街のスーパーやデパ地下を何軒も見て飲み食べ歩く事は、精神的にも肉体的にも消化する事も苦痛な事でもあり、食べ疲れて飽きてしまいます。
オーナーシェフや長年料理長をなさっている方なら‘自分の味’と言うものを分ってるので、7~8割料理が出来上がれば味見はしなくとも出来上がりの味は分るものです。
‘自分の味’を持ってから10年程もすると、自分の作ったものというものは旨くても食べたいものではありません。
食べ飽きていると言うよりも感動がない為、まったく食欲が進まないものです。
そんなところまで、食経験、外食経験、食べ疲れ経験などをしている人は、食べ物の好き嫌いは無くても何でもかんでも食べれる訳ではありません。
我儘のように聞こえますが、そこまで来ると肉体的にも精神的にも受け付けれないものが今の食文化に沢山あるものです。
チェーン店・フランチャイズ店、大量に作られる工場生産の加工食品は満足出来る物ではありません。
残り少ない食生活を無駄にしたくないもので、一食一食満足感が欲しいものなのです。
{津軽の野菜を利用して冷やし鉢。全て加熱処理をして煮浸しにしたり下味をつけ味を含ませ、素材の甘味と味わいを凝縮させる。トマトのトマト掛け、キャベツのお浸し、葉唐辛子の佃煮、スナック豌豆、オクラ胡麻和え、新人参剥きゴマ煎り、空豆蜜煮、バルバリー鴨ロース。}
煮麺(にゅうめん)_b0111551_17332084.jpg

個人的に自宅で飲み食いする分には、選択の仕様があるので大丈夫なのですが、外食となるとなかなか好みのお店や料理を探すのは至難の業です。
何を食べても食べ飽きてしまっているので、「満足感が無い!」訳ですので、食べ飽きないものを探す、もしくは自分好みのお店や料理を選択するしかないのです。
ここまで来るとお金の問題では無いので、安ければいいとか高いから旨いとかは別問題になってきます。
安いお金を出して外食しても満足感が無いのは分ってしまっているし、高いからと言ってその料理やお店が自分にとって適正である訳ではないのでしょう。
そんな経験をした人にとっては、巷で騒ぎ立てる高級食材なるものはまったく魅了を感じないものです。
鮪のトロ、ブランド牛のすき焼きやステーキ、鮨、うなぎ、フカヒレ、蟹、鮑、伊勢海老、ウニ、フォアグラ、脂の浮いたラーメン、講釈が先行した蕎麦屋さんなどなどは遠慮したいものです。
その為、高級食材に頼らないで料理を作れる和食屋さんはまだいいのですが、洋食屋さんはなかなかご面倒を掛けるものです。
昨今フレンチもイタリアンも境目がなくなりつつあるのですが、なかなか言えないですが、「フォアグラ、生ハム、ステーキ類、スモークサーモンは抜かしてくれますか?」と我儘を言う事になってしまいます。
多分、洋食屋さんからすれば、「面倒くさい客だな!」と思われる事でしょう。しかもその食材を抜かして料理を作るのは単価が上がらないし、何かと他の食材では手間が掛かるしメインを何にするか悩んでしまうのではないかと思います。
中華屋さんでも、フカヒレ、上海蟹、ツバメの巣などなど値段相応でなく美味しいものではない食材は「コースに入れないで下さい。」と伝えなければいけません。
要は、何がいいかといえば、肉も刺身類も生野菜も食べ飽きているので、加熱した高級魚じゃない魚や貝類に火の通った野菜類などになってしまいます。
ところが外食をしようにも、季節の青野菜のお浸しや煮浸しや炒め物、旬の根菜類の煮っ転がしや熱々の煮物、サッと干したカレイの塩焼きやあっさりした煮魚、天然の採れたての山菜の炒め物や天ぷらや冷やし物、これまた季節を感じさせる葉物や根菜類のお漬物、ちょっと手間がかかる海産物を入れた漬物などなどを出すお店はまずありません。
食べ飽きない食事と言うものは、そんな料理や白いご飯です。
「お蕎麦は飽きないでしょう?」と言うご意見も多分に聞くものですが、蕎麦屋さんの立ち上げに関り、昼の時間だけで一日に4~5軒も蕎麦屋さんをはしごしたり、自分で蕎麦を打てるようになってから、お客さまが来ないで大量に余った蕎麦を目の前に売上げも無く食べ切れない量の蕎麦を泣きながら啜って、余った蕎麦茶を毎日飲んでいればお蕎麦も飽きずにはいられません。
{青森特産鰯の焼干しと献上昆布の黄金色の澄んだ極上の出汁}
煮麺(にゅうめん)_b0111551_1741385.jpg

自分が「何を食べても満足感が無い。どんな食材や料理を見ても食欲が沸かない。」時に出会ったものと言えば、‘冷麺’でした。
どこで何を頼んでみても食べてみても飽きてしまっていた頃「ああ~。今日は何にしようかな~?何にも食べたくないけど食べないわけにはいかないし・・・。」と考えている時、目に付いたのが‘冷麺’。
「おっ。ここは変り種で、10年以上も食べたこと無いものにしよう!」と注文するところ、「あれ~、以外に食べれるな、これ!」10代の頃食べたときは、「なんだ!この輪ゴムは・・・。これが食い物?」と3口食べて諦めたものですが、今ではサッパリして、たまに食べる分にはとてもいいものです。美味しい冷麺であればですが・・・。
それから、白いご飯にお湯を掛けて、津軽では「湯漬まま」といいますが、これが飽きずにいいものです。時には渋めの煎茶をかけ、そのときの気分で梅干や佃煮類、納豆や塩鮭、キュウリの芥子漬けやナスやササギの炒め物で食事をするとサラサラと食事を心地よくしてくれます。
そして何と言っても煮麺でしょうか。
これが何と言っても食べ疲れた体も心も満たしてくれるものです。
自分の煮麺の食べ方はと言うと、お鍋に献上昆布と青森特産鰯の焼干しと水をいれ2~3時間置いておきます。
素麺のほうは、小豆島か島原の素麺を買え置いて、1年以上冷暗所で寝かせます。所謂素麺業界では‘ひね素麺’と言われ、小麦粉の加工麺類は出来立てよりも寝かせたほうが旨みが増すものなので、自分で‘ひね素麺’をこさえます。時には稲庭うどんもいいですね。(太目のうどんは疲れるので、素麺・冷麦・稲庭までの太さのものを好みます)
昆布と焼干しを入れた鍋を火に掛け、沸騰する前に灰汁を掬い濾します。
そうすると、黄金色のスープが出来るので、それを火に掛け沸騰する前に素麺を乾麺状態で入れ1分ほどかき混ぜて煮てお終いです。味付けはしません。それだけで充分美味しいものです。
出汁自体が献上昆布と鰯の焼干しで味付けせずとも美味しいですし、素麺自体に塩味が付いているので(素麺を作る行程で塩が利いている)調味料を入れる必要はありません。もし足りない時は、薄口醤油を気持ち程度足すだけですね。
「何を食べても満足しない。」方には、‘湯漬まま’か‘煮麺’をお勧めいたします。あっさりと爽やかな食事が出来る事でしょう。
「何を食べても満足しない!」とおっしゃる方にその類を勧めていたら、そのうち「何でラーメン、蕎麦屋はあるのにソーメン屋は無いんだろうね?」とそれこそ‘それ以上の我儘は無い’と言うことをおっしゃっておりました。
そんなのあるわけ御座いません。出来るわけが御座いません。街場の定食屋的お蕎麦屋さんでメニューに素麺は見かけても、素麺専門店など成り立つわけが御座いません。
素麺食べにわざわざ外食する人は、「何を食べても満足しない!」人。位のものなのです。そのような方々は万人に一人だし、ソーメン一杯に1000円出す価値観が備わっていなければお店側の経営が出来るわけがないからです。
けれども、お素麺と言うものは、巷でちやほやされる事もないし、テレビや料理雑誌の話題に上らないし、美味しいものの中にも顔を出さないし、アイドルになることもない可愛そうな存在ではあれ、お素麺のほうはと言うと「御免あそばせ、そんな流行廃りとは私は関係御座いませんのよ。」とばかりに根強い人気があり、ちゃーんとスーパーでは多くのカップラーメンが新発売とともに数ヶ月で姿を消すのに、素麺だけは静かに消える事無く陳列され、お中元時には桐の木箱にも入っているし、食品業界のかなりぶっとい存在として長々と幅を利かせているものです。
お素麺のような料理や飲食店の存在が、社会に増えることが厚みのある街つくりに成る様な気がいたします。
煮麺(にゅうめん)_b0111551_17373466.jpg

{今が旬。小川原湖の天然うなぎ。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷’もご覧下さい。
by tk-mirai | 2010-07-13 17:08 | Comments(0)

未来のオーナーのブログ


by tk-mirai
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31