包丁供養
2009年 04月 16日
{板前さん達が集い、包丁供養。青森市広田神社内}
年に一度、我々和食店同業者の板前の皆さん方が集まり、普段お世話になっている包丁に感謝と供養を込め、神主さんにお願いをして、お払いをしていただいております。
集まるメンバーは、それなりのベテランが多く、駅前のチェーン店や冷凍食品ばかりを取り扱って、利益だけを追求するようなお店の方々ではなく、調理師免許はもちろんの事、その上の国家試験、‘技能士’免許や‘県の名工’などを持つ皆様、オーナーシェフ始め、料理屋、割烹屋、個人の小さなお店で働く皆様が、同業の横のつながりを大切にし、年に何度か、集まり交流しております。
このように集って、儀式的なことをするのも、昭和元年から始まり、もう八十数年になるそうです。
その代表を務めるのが、青森清庖会(調理師会の名前)代表、青森では古い歴史を持つお料理屋さん、割烹粋楽さんです。
我々板前は、働く場所も違えば、休みなども色々違う為、会員一同が全て集まる事は出来ませんが、時間の都合の付く者だけでも集まり、日頃の道具への感謝をささげます。
包丁はその代表であり、飲食店にある全ての道具が、板前さんにとっては財産です。
包丁は、味を左右する最も重要な道具の一つであります。毎日のように使い、他の道具に比べれば、とても使う頻度も多く、磨り減っていくものです。
その磨り減って、もうお役御免、ご苦労さん、お疲れさんの包丁を、燃えないゴミに出すのではなく、今までの労いと、多くの命ある生き物たちを殺生した成仏に、包丁塚に納めます。
{歴代の和食の諸先輩方の寄付で建立された、包丁塚。}
日本料理は、世界で唯一の‘引き算’料理であります。その食材の必要なところだけを残し、食味に邪魔な要素だけを取り除き調理いたします。
そのほかの各国の料理は、‘足し算仕事’になり、調理した食材に邪魔な要素があれば、香辛料を入れたり、ソースでコーティングしたり、他の食材を組み合わせてしまったりなど、色々足し算をしていきます。
シンプルで、地味で、一番簡単そうに見える日本料理は、一番手間隙掛かり、誤魔化しが利かないものですね。
「刺身は、切るだけで、料理とは言わない。」と言う、シェフさんもいらっしゃいますが、失礼ながらそれは、調理を知らないものでしょう。
お刺身は、切る事により、味を作り出します。魚介類の状態を把握し、旬の食材なのか、旬であっても脂の乗りはどうなのか、オスかメスなのか、メスであれば、卵に栄養が偏って、身は味気ないのではないか、活締めなのか、野締めなのか、氷詰めなのか、下氷なのか、漁法はどうだろうなどなど、色々な要素を踏まえ、その魚介類を見極め、仕入れをし、鱗やぬめり・血や内臓などの生臭みの要素を包丁で取り除き、綺麗に水洗いし、水気を拭いて、切れる包丁で卸し、骨を取り除き、皮を引き、食べ易い様に切り分ける。
お酒で言う大吟醸のように、酒米を磨き、中心の核に近い部分だけでお酒を作るのと同じように、お刺身も魚の身だけを包丁で取り出す、しかも生臭みなどの余計なものは身に付けづに・・・・。
もう一つ例を挙げれば、熟したトマトを切るとします。
切れない包丁で切ると、潰れて、グチャグチャニなり、トマトの中の汁はダラダラ流れます。
切れる包丁で切ると、スパッと美味しい汁を閉じ込め、切り口は綺麗にひかり、中の汁はあまり出ません。
切ると言う作業は、少なからず食材を切断し、身を細胞を破壊する行為です。切れ味鋭い包丁は旨みを閉じ込め、切れない包丁は、ズタズタに食材を引き千切るかのように、旨みも逃してしまいます。
和食の職人は、切るだけで美味しさを作り出す事の出来る、数少ない仕事人です。
いつもお世話になっている、包丁を道具類を大事に、美味しいお料理を作り、お客さんに楽しんでいただくのが我々調理人のお仕事と思われます。
{自分が日頃愛用している、包丁の数々。このほかにも食材の使い分けにより、20本くらいあります。}
ゴールデンウィーク期間は、休まず営業いたします。お気軽に、お問い合わせください。
ヤフーブログ‘食の超大国青森’もご覧下さい。
年に一度、我々和食店同業者の板前の皆さん方が集まり、普段お世話になっている包丁に感謝と供養を込め、神主さんにお願いをして、お払いをしていただいております。
集まるメンバーは、それなりのベテランが多く、駅前のチェーン店や冷凍食品ばかりを取り扱って、利益だけを追求するようなお店の方々ではなく、調理師免許はもちろんの事、その上の国家試験、‘技能士’免許や‘県の名工’などを持つ皆様、オーナーシェフ始め、料理屋、割烹屋、個人の小さなお店で働く皆様が、同業の横のつながりを大切にし、年に何度か、集まり交流しております。
このように集って、儀式的なことをするのも、昭和元年から始まり、もう八十数年になるそうです。
その代表を務めるのが、青森清庖会(調理師会の名前)代表、青森では古い歴史を持つお料理屋さん、割烹粋楽さんです。
我々板前は、働く場所も違えば、休みなども色々違う為、会員一同が全て集まる事は出来ませんが、時間の都合の付く者だけでも集まり、日頃の道具への感謝をささげます。
包丁はその代表であり、飲食店にある全ての道具が、板前さんにとっては財産です。
包丁は、味を左右する最も重要な道具の一つであります。毎日のように使い、他の道具に比べれば、とても使う頻度も多く、磨り減っていくものです。
その磨り減って、もうお役御免、ご苦労さん、お疲れさんの包丁を、燃えないゴミに出すのではなく、今までの労いと、多くの命ある生き物たちを殺生した成仏に、包丁塚に納めます。
{歴代の和食の諸先輩方の寄付で建立された、包丁塚。}
日本料理は、世界で唯一の‘引き算’料理であります。その食材の必要なところだけを残し、食味に邪魔な要素だけを取り除き調理いたします。
そのほかの各国の料理は、‘足し算仕事’になり、調理した食材に邪魔な要素があれば、香辛料を入れたり、ソースでコーティングしたり、他の食材を組み合わせてしまったりなど、色々足し算をしていきます。
シンプルで、地味で、一番簡単そうに見える日本料理は、一番手間隙掛かり、誤魔化しが利かないものですね。
「刺身は、切るだけで、料理とは言わない。」と言う、シェフさんもいらっしゃいますが、失礼ながらそれは、調理を知らないものでしょう。
お刺身は、切る事により、味を作り出します。魚介類の状態を把握し、旬の食材なのか、旬であっても脂の乗りはどうなのか、オスかメスなのか、メスであれば、卵に栄養が偏って、身は味気ないのではないか、活締めなのか、野締めなのか、氷詰めなのか、下氷なのか、漁法はどうだろうなどなど、色々な要素を踏まえ、その魚介類を見極め、仕入れをし、鱗やぬめり・血や内臓などの生臭みの要素を包丁で取り除き、綺麗に水洗いし、水気を拭いて、切れる包丁で卸し、骨を取り除き、皮を引き、食べ易い様に切り分ける。
お酒で言う大吟醸のように、酒米を磨き、中心の核に近い部分だけでお酒を作るのと同じように、お刺身も魚の身だけを包丁で取り出す、しかも生臭みなどの余計なものは身に付けづに・・・・。
もう一つ例を挙げれば、熟したトマトを切るとします。
切れない包丁で切ると、潰れて、グチャグチャニなり、トマトの中の汁はダラダラ流れます。
切れる包丁で切ると、スパッと美味しい汁を閉じ込め、切り口は綺麗にひかり、中の汁はあまり出ません。
切ると言う作業は、少なからず食材を切断し、身を細胞を破壊する行為です。切れ味鋭い包丁は旨みを閉じ込め、切れない包丁は、ズタズタに食材を引き千切るかのように、旨みも逃してしまいます。
和食の職人は、切るだけで美味しさを作り出す事の出来る、数少ない仕事人です。
いつもお世話になっている、包丁を道具類を大事に、美味しいお料理を作り、お客さんに楽しんでいただくのが我々調理人のお仕事と思われます。
{自分が日頃愛用している、包丁の数々。このほかにも食材の使い分けにより、20本くらいあります。}
ゴールデンウィーク期間は、休まず営業いたします。お気軽に、お問い合わせください。
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by tk-mirai
| 2009-04-16 18:54
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