ずぎ芋

{弘前産ずぎ芋}
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津軽では、ずぎ芋。共通語で言えば、芋茎芋(ずいきいも)。
普段、余り目にすることのない食材のひとつと言えるでしょう。
里芋は多くの方がご存知の通り、土に隠れた状態で掘り起こされますが、その上についている茎や葉っぱの部分は、案外知られていないものであります。
秋の彼岸に、先祖の御霊を祀り、お墓へ供え物をする時、落雁や果物、季節の野菜を里芋の葉に乗せ、お墓参りする風習は今も根強く残っている事でありましょう。
お線香の香りと芋の煮っ転がしの匂いを感じながら、赤とんぼが飛び交う墓地で、先祖に向かい手を合わせて、ひと時を過ごすと、「秋だなぁ~。」と思うものであります。
茎のほうは、とても灰汁が強く、刃物などで切ると切り口は、空気と触れ、酸化してすぐ赤くなるものでありますね。その切り口から出てくる汁を、直接地肌に付けようものなら、痒くて痒くて我慢が出来るものではありません。長いもの汁では何ともない自分でも、ずぎ芋の汁は、出来れば触りたくないものであります。
その為、ぜんまい等のように干して乾燥させて、カラカラにしたものを、切り干し大根の要領で水で戻してから、お味噌汁の具や煮物などで食べられる事が多いものであります。けれども、津軽では、この干したから芋を食べる習慣は、あまり聞いたことがありません。
{灰汁抜きした、芋茎を煮崩れするまで煮る}
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このずぎ芋は、秋の短期間だけのものであり、年に何度も口に出来るものではありません。
子供の頃、両親が共働きで、兄貴も姉も外に遊びに行ってしまい、誰もいない家に一人帰り、一番最初にすることが、冷蔵庫の中を見渡す事とガス台の上に載ってある鍋のふたを開け、母親が作り置きしたおかずを確認する事が、家へ帰る楽しみの一つでありました。(その習慣はいまだに体に染み付き、外でお腹一杯飲み食いした後も、うちに帰ると無心で冷蔵庫を開けてしまいます。)
子供の頃、鍋のふたを開け、崩れて少しトロトロになった、ずぎ芋の味噌汁を見ると、なぜかしら子供心に「やったぁ~。」と思ったものです。
その何とも言えない、掘りたての芋の甘さと、溶けた芋茎のぬめりに、煮干だしと赤味噌が絶妙な香りを醸し出し、何杯でもお代わり出来たものです。
家庭のかっちゃ(母親)の作る技術と知識では、このずぎ芋の味噌汁は難しく、出来立ては、ものすごい強い灰汁のため、口に含むとのどや口の中がひりひりして美味しく感じることは出来ません。ところが不思議に、何度も火に掛け、煮崩れしてしまい、どろどろになる頃には、灰汁も抜け、とても甘く、フウ~フウ~冷ましながら食べると、心も体も温まります。
出来立てのずぎ芋の味噌汁をひとくち口にし、ヒリヒリして、かっちゃに「これ食べれない。」というと、「まだ早いね。もう少し寝かせて明日食べなさい。」と言われ、その通り明日を楽しみに寝ると、酔っ払って帰って来たとっちゃ(親父)が、自分が寝ている間に、トロトロの味噌汁をほとんど食べてしまっていた事があり、その時は親父を憎んだものです。
{身も心も温まる、ずぎ芋の味噌汁}
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今ではお料理を仕事として、お芋の煮方、芋茎の灰汁の抜き方、出汁のバランスなど、少しは美味しく作れる技術と知識を身に付けたものなので、そこそこのずぎ芋の味噌汁は作れるようになったと思います。
けれども、独立する前、料理屋では、関東・関西料理ばかりを作っていたため、ずぎ芋の味噌汁など、習う事もなければ、見ることも触れる事もなく、かっちゃの作ったずぎ芋の舌に残る記憶だけを頼りに作ったものであります。
毎年、短期間だけこの料理というよりおかずをお客様にお出ししてはおりますが、「何十年ぶりに口にした。」という方もいれば、「見たこともない。」という方もおり、年々なくなりつつある、家庭の味と思います。
その要因は、今の時代にはそぐわない、手間と時間がかかり、調理が難しいと言う事が言えると思います。
けれども自分は、田舎料理の醍醐味を存分に味わえる数少ない料理の一つと思います。
ただ早く、出てくればいい、食べればいい。という流れが、どれだけ日本の食文化を破壊したかは分りません。
今の現状は、見てくれを強調し、講釈をただただ並べ、化学調味料や添加物の入った料理と言うより工業製品が幅を効かせております。その様な味は、インパクトがあり、醤油と砂糖と科学物質を焦がしたような味ばかりで、日本人の繊細だった舌も体も心をも壊しているものでありましょう。人間の感覚を破壊するものでありますね。
今は、添加物が入っているか、化学調味料が入っているかを食べ分けれる人は、ごくごく少数になりました。
田舎料理や家庭料理は、どこまでも純粋で健康で、家族の明日を作るものであって欲しいものであります。
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{青森はぶどうの生産量も日本有数です。これはお客様の畑の白葡萄}

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by tk-mirai | 2008-10-08 15:01 | Comments(0)

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