子持ちヤリイカ

{朝揚がり。魚屋さんの水槽内でぴょんぴょん跳ねる子持ちのヤリイカ}
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この時期ご飯のおかずにはもちろんの事、お酒のお供にも絶好の肴がございます。
晩冬の2ヶ月ほど限定の珍味。
産卵を控え、お腹にたっぷりの卵を抱えた子持ちのヤリイカ。
朝早く鮮魚店にお邪魔をし、透明に光るぷりぷりのヤリイカの胴体を摩りながら、一本一本卵の入り具合を確認し、「どうすればあなたは美味しくいただけますか?」と心で囁きながら、今日はどうしてくれようぞ?と献立を悩むものであります。
イカと言う生き物はとっても繊細で、鮮度の変化も激しく、生きたまま遠くの地へ運ぶ事は困難な生き物でございます。他の魚類の2~3倍も酸素も必要です。
自分は青森というもっとも恵まれた環境の中に抱かれながら料理を職業とさせていただいたおります。お料理の美味しい美味しくないの6~7割は食材の鮮度に尽きます。マグロや肉類など熟成を経て旨みを発揮するものは別として、お料理は鮮度が一番の調味料でございます。
‘食材は旅をしてはいけません’海から離れても、土から離れても、食材は生きています。我々人間が旅をして移動で疲れるがごとく、食材も生きている環境から離れると疲労のため味が落ちます。
イカ類は旅の出来ない代表的な食材の一つでございます。
青森では一般的には‘冬はヤリイカ。夏はマイカ(するめイカ)。’が旬であります。
その間間にスミイカやアオリイカなども水揚げされますが、冬にヤリイカ、夏にマイカを食べなれている青森の皆さんはあまり他のイカ類を好んでは召し上がりませんね。
{皮をきれいに残すため活きた透明なうちに下処理をし、さっと煮染めます。}
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イカはきめ細かく色とりどりに魚体を変化させます。
水槽の中に顔を映すと、静かに透明に休んでいたいイカさん達は、細かい斑点模様で青や赤や黒や黄色など色とりどりに発光致します。
都会や海無し県ではイカは白いものだと思われている方が多い様でありますが、イカの鮮度の見極め方は、海から揚げたては透明。透明から半透明の白へ。白から赤へ。赤から赤黒へ。赤黒から白へ。白から濁った白へ色を変えていきます。大体都会の魚屋さんで目にするのが、この最後の濁った白の状態のイカであります。
青森では一般家庭でも、町場のスーパーや魚屋さんへ足を運ぶと赤か赤黒のまだまだ鮮度のよいイカ様にお目にかかれます。
このクラスであれば、綺麗に下処理をし、サッサッサと包丁で切り、炊き立てのご飯にイカの刺身をたっぷりのせ、すりたての生姜とお醤油をパッと掛け回し、口へ運ぶと「ふ~」っと時間を忘れさせてくれる事でしょう。青森の皆さんはなんて贅沢なのでしょうか。
この時期、お店のほうでお出しいているのは活イカ刺しはもちろんの事、胴体にたっぷり卵を抱いた、手のひらサイズの子持ちのヤリイカを焼き物でお出しするのも旬の味でございます。
とにかく鮮度がものを申します。
イカは皮付きのまま火を入れる事はとにかく鮮度でございます。鮮度が落ちたものは煮たり焼いたり致しますと皮が捲れてしまいます。
透明に生きた状態のイカを加熱すると、姿形よろしく、綺麗で美しく美味しくいただけます。
「火を通すのだから、多少鮮度は落ちてもいいだろう。」という甘い考えではイカは色気を出してはくれませんし、味も劣ります。
透明でパキパキと刺身で食べられる業態のものを、なりふり構わず、煮て焼いて食べるのが最も美味しく贅沢な食べ方でございます。
皮のベロリと剥けたイカは品も色気もない、露出が売りの女性のようであります。
原価は掛かっても、品も色気もあるイカを御客様にはお勧めいたします。
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             ~子持ちのヤリイカ焼き~
     ・かけそばのお出汁程度の汁を用意する。
     ・一欠けの皮付きまま生姜を洗い、スライスし汁に入れる。
     ・出来れば鮮度のよい子持ちのヤリイカを買い求め目と口バシと墨を取り水洗い。
     (このとき卵を出してしまわないように注意してください。)
     ・汁を火に掛け、冷たいうちからイカを入れる。   
     (熱々の汁に入れると皮が剥けやすい。)
     ・中火程度に火を保ち、浮いてきた灰汁を掬い3~5分煮る。
     ・火が通ったらそのまま冷まし、中まで味を染み込ませる。
     (出来れば朝に煮て、夜食べる。もしくは夜に煮て朝食べる。)
     ・このままでも美味しいが、表面に軽く油を塗り、弱火でじっくり焼く。
     ・一口大に切り分け盛り付け。
     器は白磁が美しく、付け合せは菊芋の甘酢漬けにあざみの茎を炒めたものがよろしいと思います。(器・青森市ひいろ陶房作)
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by tk-mirai | 2008-03-15 14:30 | Comments(0)

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