低アル時代


{10月から旬の津軽海峡天然活締めシマダイ。シャキッとした歯ざわりと甘味が旨いです。}
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ここ数年低アル時代が加速傾向にあります。
「低アル」とは、個々のお酒のアルコール度数が今までの平均より低いお酒のことを意味します。
スーパーなどの棚に陳列してある日本酒やウイスキー・焼酎などは、瓶詰めして商品化される前に加水がされている事やワインやカクテル類には香料や薬品が添加されている事を認知していない方々が結構いらっしゃる様です。
カクテル・リキュール類は特に褒められる内容ではなく、醸造アルコールと香料・保存料・添加物のごちゃ混ぜ液体で、それらを飲んで次の日「飲みすぎて悪酔いしちゃった・・・。」などと感じる方は「飲みすぎたんじゃなくて選択肢が悪かったんですよ。」と申し上げなければなりません。
悪酔いの多くは飲んだアルコールに含まれる不純物が原因であって、添加物がまったく入っていないビオワインや醸造アルコールを添加していない日本酒などは悪酔いすることはほとんどないものです。
不純物が沢山入ったお酒であるがために、アルコールと不純物が相まって体が毒素や必要ない成分に拒否反応を示し、一生懸命排出作業を行うため具合が悪い状態になるものです。
「いい酒は朝が知っている。」という酒造メーカーの宣伝文句が昔ありましたが、その通りで不純物のないお酒は悪酔いする確率は激減いたします。個々のアルコール分解能力を超えた時は二日酔いはするとは思いますが・・・。
一般的に市販されている焼酎類のアルコール度数は20~25度。もともとの原酒に加水をしてそのようなアルコール度数に設定されています。「原酒」と明記して限定少量生産と歌って35~45度の商品もたまには出てきます。
ウイスキーはメーカーにもよりますが日本の物では原酒に加水をし、平均40~42度のアルコール度数設定で販売されています。
ウイスキーは、大抵蒸留マシンで1~3回の蒸留作業を行い平均45~65度のアルコール度数で原酒は造られます。蒸留の回数が多いほどアルコール度数は上がりますが、原料の性質や個性が失われただの純粋なアルコール成分になってしまうので、多くのウイスキー蒸留所は2回の蒸留が多いそうです。
ワインは、もともとアルコール度数が高くないので中身がまともなワインであれば11~14度くらいのアルコール度数で出来るようです。その為、加水などはないものです。
ところが、大量生産で安いものに成ると、葡萄ジュースに醸造アルコールを加え香料を加え、補糖・補酸などの味付けをし、ワインというよりは中身はカクテルというようなまがい物が平気で売られているものです。
{原酒のスコッチウイスキー。アルコール度数53~62度ほどのカスクストレングス。一般流通しているウイスキーとはまったく別な香り余韻があり、この手のボトラーズを覚えると普通のウイスキーは飲めなくなります。}
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日本酒は、低アル時代を象徴するお酒になってしまいました。一昔前までは16~19度くらいのアルコール度数で造られ売られていましたが、今は12~15度くらいのアルコール度数設定になって造られているようです。
もともと、一昔前までの日本酒は醸造したては17~19度、高いものになると22~23度のアルコールで出来ることもあったようです。それではアルコール度数が高いので出来たお酒に加水をして16~17度くらいのアルコール度数に落として瓶詰めされ火入れされ販売されるのが今までの日本酒でした。
ところが十年前くらいから、日本酒の醸造が加水をしないで16~17度のアルコール度数で出来上がるように造られ始め、ここ数年は13~15度のアルコールで出来上がるように設定され醸造される日本酒も出てきました。
そのような流れで出来たお酒はどのようになったかと言えば、薄っぺらい骨格がない味気ない厚みがない香りがない余韻がない水臭いお酒ばかりになってしまいました。封を切った瞬間から枯れていくような酒ばかりです。どこかの酒造メーカーの後追いのように多くのお酒が味わいのないどこにでもいる優等生のようなお酒になってしまいまいました。同じような味わいの酒ばかりになってしまいました。個性的な味わい深いお酒を造る酒蔵は少数派になってしまいました。
日本人のアルコール消費の激減により日本酒業界の経営不振が一番の原因とは思われますが、売れている流行の酒になびいているようで個人的にはあまり感心が出来ません。品質よりも「売り」が先行し万人向けの分かりやすいお酒が主流になっています。もちろん経営者として薀蓄講釈より存続しなければただの綺麗事になるとは思いますが、このごろの日本酒は昔の日本酒を知っている者にとっては悲しい時代でしょう。
気候が安定し酒米の出来のいい年はアルコール度数は高く出来るようです。アルコール度数が高く出来るから味わいも香りも余韻も厚みもあり美味しい酒が出来るものです。
本当は火入れもしないで加水もしないで生の原酒の状態で飲むのが一番美味しいのですが、通常商品は誰でも飲み易いように少し加水をしアルコール度数を落として火入れをし瓶詰めされ販売されます。
今まではアルコール度数が高く出来たものを加水していたので、まだ味わいは保たれますが、今はアルコール度数が低く造られたものに加水をし火入れをしてしまっているので、香りも味もないただの水のようなお酒が主流になってしまいました。そんな味も素っ気もないアルコール度数の低いお酒を半年寝かせて秋口に「冷おろしとか秋上がり」と銘打って販売するのですから、枯れたひねた酒が平気で販売されているものです。元々秋から春先にかけアルコール度数を低く醸造したお酒なのだから、それを寝かせても持つわけがない。熟成なんて出来るわけがない。というのが昔からの酒飲みの愚痴になるでしょうか?
当たり年の骨太の酒を醸造する杜氏さんの生原酒であれば、出来立ても美味しいですが、それを数年寝かせてひねることなくクリアーに熟成できれば、奥行きのある味わい深い日本酒を楽しむことができます。
が、低アルの造りではそのような美味しさを体験できることはないでしょう。
{青森県の地酒。すべて生原酒。加水・火入れした薄っぺらいお酒とはまったく別な味わいです。}
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よく「料理のの邪魔をしないような・・・・。」「料理を引き立てるあっさりとした飲み易いお酒。」などと、今流行の味気ないお酒を所望する方々を見かけますが、当店では加水も火入れもしない無調整の生の原酒をお勧めいたします。そのほうが味わい深く豊かで美味しいからです。
料理とお酒の関係は相乗効果を生み、1+1が味覚的には4~5の数値を示し、脳的にはマリアージュを感じれば7~8の数値を感じるという事を味覚の実験結果は示しているそうです。
ところが、元々低アルに醸造され加水され火入れを2回され味も香りも素っ気もない水臭いお酒であれば、マリアージュは期待出来ません。料理よりインパクトがないというだけで、日本酒の水割りを飲んでいるようなものです。料理よりも香りも無く味が薄いというだけでマリアージュは期待出来ません。そのようなお酒と料理は1+1が2にも成らないと思います。
「何でそのような味もない水臭い酒が高評価なのか?」ということを考えた時期があり、酒造メーカーの熱心な営業と商売上手もありますが、出てきた答えは「食べるものも水増しされているからか・・。」ということでした。
青森という食料自給率が高く多種多様に産出される食材により豊かな食文化の土地で食生活をしていれば、肉も野菜も果汁100%を普段から口にしているものです。ところが食料自給率の低いところではそれは贅沢の極みといもので簡単なことではないようです。
都市部からご来店いただいたお客様に青森では普通のりんのジュースをお勧めすると「ええ~、美味しい。このりんごジュースりんごの味がする~。」と表現される方も数人いらっしゃいました。「りんごジュースを出しているんだからりんごの味がするのは当たり前じゃない?」と最初は感じたものでしたが、お話を伺っていると果汁100%のりんごジュースは都市部には「そんなに無い。」ほとんどが果汁10~20%。濃縮還元ジュースならいいほうだということのようです。
その為、加水も味の調整も無い100%のりんごジュースの香りと濃厚さと旨さに感動するようです。
逆に青森県人なら、加水したものや濃縮還元したりんごジュースを飲むことのほうが珍しく、法事の頂き物の中に大手飲料メーカーのジュース類が入っていて、それで5~20パーセント位のジュースを見かけるくらいでしょうか。子供だましのような水臭いのものなので自分は飲むことはありません。
{この時期だけのご馳走。乾燥させない在来品種の花豆。塩煮してやわらかいホックリした甘味をいただきます。乾燥させないものは生産者だけが食べれる希少食材。}
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初めて、‘はんぺん’や‘ちくわぶ’といものを興味心身で食べたとき「何なんだこの食べ物は!」と意味不明の怒りのような錯覚に見舞われ「何でこんな食材が存在するのだろう?これの何が旨いのだろう?こんなもので腹の足しに成ったら無意味な食事に成っちゃうじゃん。」と思ったものでしたが、資源の乏しい地域の食に関する製造業者が原料の調達・製造コスト・売買価格などなどを考慮した苦心の食材ということが理解出来、自分の浅はかな思いに苦慮したものです。
ジュース類だけじゃなく、そのほかの食材に関しても食料自給率の高い地域では、加工は極力少なく、素材そのものを味わえる、言い方を変えれば果汁100%を味わっているものでしょう。
生産地の料理はシンプルなもので味付けも単純明快です。それは加工技術が無いのではなく、いい食材であれば加工は必要なく、土地の人々はどうすれば美味しいかを重々理解しているからストレートな料理が出来るのです。都会の料理は加工技術があって洗練されて見た目も美しいというのは間違った感覚で、それは鮮度が落ちたものなので加工を重視したり商売用に見た目を重視したり原価率を下げるためにほかの食材とまぜこぜしているだけのことです。
その代表が‘はんぺん’‘ちくわぶ’のような加工食品で、魚のすり身を100%では原価がかかってしまうので、主原料の何倍もの副食材を加えたり、元々の原型の形だけを真似て原価の低い粉もので作ったりして出来たものです。その知恵と努力には脱帽いたしますが、個人的には食べることの無い食材です。果汁・肉・魚などを原料そのもの100%を味わえる環境にいれば、無くてもいいものの一つでしょう。
今や多くの食材・加工食品が消費する側の状況に関係なく、売り手側の都合で生産された利益率の見込める商品開発がここ20年進み、全うな食材・商品を選択できる余地が無くなったといってもいいでしょう。
自給率の高い土地柄ならまだ、無農薬や在来品種や天然ものの魚介類を口に出来ますが、都市部では普通に暮らしていれば工業製品化された大量生産の食材・加工食品しか選択肢がなくなっているものでしょう。
そしてその多くは食中毒などの事故防止のため原料を漂白し、漂白した分香り味が落ちるから大量の旨味調味料・香料、日持ちを良くするための保存料・添加物などが使われ、さらに原価を下げるため原料に副原料を加え増やし水増しし商品化されているのが現状です。
その為多くの方々が極端な言い方をすれば水増しされた味気ない食材・料理を口にし、大量の合成調味料と添加物で舌はマヒ状態になってしまい、天然の奥深い豊かな滋味を美味しいと感じず、ハンバーガー・フライドチキンの餌食になっているものでしょう。
{津軽の郷土料理津軽海峡産天然活締めアンコウの共あえ。エラ・骨以外のすべてのアンコウの部位を利用した料理。調味料以外100%アンコウの味わいを堪能できます。}
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食材・料理が薄っぺらい。だから低アル時代になっていて、もうこの動きは止められないかも知れません。
その要因の最大の理由は天然の食材の枯渇。そして養殖業の発達。野菜類の遺伝子組み換え。畜産の工業化。調味料の大量生産合成化。低価格競争。などが上げられるでしょうか?
けれども、料理を作っていて感じることは、食材の枯渇はもう止められないかもしれないけど、日本酒に関してはこれからレベルアップする要素が沢山あるというプラス要素を感じます。
醸造・微生物の醗酵に関しては日本の技術力は群を抜いており、ワインが「当たり年だ。外れだ年。」というのに日本酒にはそのような表現が少ないのはどうしてかというと、醸造の技術力が高くあまり味にブレが無い。ということが言えます。ワインはテロワールといって気候風土がその年の環境がもろに醸造に現れますが、日本酒は多少米の出来が悪い年でも、ワインより人的要素・技術力が多分に反映され味わいを技術力でカバー出来るものです。
ですから、昨今は今まで日本酒に縁の無かった方々や若い女性をターゲットに色々な工夫・営業努力・商品開発などを酒造メーカーは一生懸命行っていて海外にも進出し少しずつ日本酒の実力も世界に認められてきました。今は多くの方々に日本酒のすばらしさを知っていただき初心者から中級者の水臭いもしくは優等生の日本酒を味わっていただき、ゆくゆくは個性的な香りも味わいも厚みも奥行きもある骨格のしっかりした味わい深い日本酒をお求めいただく時代がきて日本酒の向上を促していただけるだろうと確信しています。
低アル時代から高アル時代になれば、今よりもっともっといい国が出来るでしょう。
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{秋の夕暮れ。浪岡町から岩木山を望む。}
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by tk-mirai | 2016-11-18 15:29 | Comments(0)

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