お盆時期の青森の味

{この時期の津軽のソウルフードと言ってもいいかもしれません。‘ササギの炒め物’津軽人はそれぞれ思い入れがある料理でしょう。}
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保温性の高い股引と通気性の悪い厚めの生地のズボンを穿き、Tシャツや長袖を重ね着して、その上からモコモコッとしたハイネックのセーター、おまけにチャンチャンコをまといコタツに滑り込み、コタツの上には卓上コンロががんがんと火が掛かり、熱々の湯気がモクモクと上がる甘味の強い味噌味の寄せ鍋、そのお供にはこれまた素手では触れそうも無いほどの熱々の熱燗を片手に、フーフーいいながら寄せ鍋のグツグツ煮えて味の染みたお豆腐を頬張る・・・。
という様なことを今年の蒸し暑い夏に、クーラーも掛けずにやっている御仁はなかなかいらっしゃらないと推測いたします。
日本にはいくつも季節が次から次から訪れ、その時期時期に見合った美味しい食材とそれをより一層美味しく食べる雰囲気造りや装いがあり、長い期間をかけて我々の先人たちが経験上から気候風土に身有った生活様式や文化を育んできたものでしょう。
昼時には、扇風機や団扇を身近に置き、大きなドンブリに氷を入れてたっぷりのソーメン、薬味は茗荷に紫蘇・葱・生姜を細かに刻んだもの。そのお供に茄子の油炒め(醤油味のときもあれば味噌味のときもある)、たっぷりのササギの炒め物、茹でたてのキミ(トウモロコシ)と枝豆。カボチャの煮つけ、トマト刺し(トマトを刺身と同じように食べる)。キュウリ揉み。息継ぎには氷たっぷりの麦茶。それが終わってからはメロンやスイカがデザートとして控えている・・。
こちらの方がいかにも夏らしい食事風景でしょう。
夜はソーメンがご飯に代わり、ホタテや烏賊刺し、ホヤミズ、カレイとササギか茄子の煮付け、野菜料理は昼と同じようなものでしょう。茗荷が出始めると身欠き鰊とキュウリと茗荷を食べよいように切り一緒に盛り、脇に赤味噌を添えて各々味噌をつけて食べるのが夜の食事でしょうか。
これが青森の一般的なごく有触れた夏の食事風景でありました。
ところが年々季節感や行事などは薄らぎ、ここ20~30年の現実を無視した作られた社会を長く経験している方々は、大量に工場生産された添加物や調味料だらけの出来合い物ばかりを所望し、普段は勿論お盆も正月もハンバーガー、誕生日もクリスマスもハンバーガーと、年がら年中同じものばかりを召し上がっているような次第でありますね。
{我が家のトマト。今年は雨が少ない為なかなか出来がいいですね。}
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夏には夏の美味しさがあり、冬には冬の美味しさが御座います。
その季節だから美味しいと感じれる味覚と、その時期では美味しいと感じられない味わいがあるものです。
お豆腐一つ取ってみても、夏に湯豆腐よりも冷奴の方がよろしいものでしょう。
同じお豆腐ではあれ、季節による食べ方食べようによっては感じ方、味覚も別種の食材のように感じられるものです。
瑞々しい青々とした採れたてのキュウリを出来るだけ細くシャシャシャと包丁で千切りにし、冷たい水にさっと潜らせ、ひんやりと冷やした水切り豆腐に載せて生姜を利かせたゴマ醤油やお好みでラー油などを垂らし、キリット冷やしたビール片手に摘まむお豆腐のしみじみとした味わい、キュウリの爽やかなシャキシャキ感・・・・。蒸し暑い夏だからこそ美味しいと感じるものでしょう。
日本各地に、それぞれ気候風土にあった夏の過ごし方・食文化というものが有るものでしょう。
山形では‘だし’というものがよく知られ、茄子・キュウリ・茗荷・紫蘇・生姜などなどを細かに刻んで醤油などに漬け込んだものをご飯の上に掛けて食べたり、おソーメンの薬味などにして食べたりするもので有りますね。
近年は夏になるとよくゴーヤを取り上げるテレビなども増え、チャンプルーが定番として見かけ、沖縄料理も全国区になっておりますね。
津軽では夏の郷土料理も盛りだくさんで、‘ホヤミズ’‘茄子の紫蘇巻き’‘ササギの油炒め’‘ピーマンと身欠き鰊の醤油和え’‘蜆炒め’‘ホタテ・鮑・サザエ・烏賊刺し’などなど他にも沢山あるものですが、他県の方々にあまり納得していただけないのが、‘塩鮭(または塩マス)焼いたものをご飯に乗っけてもしくはそれをおかずにご飯に氷水を掛けて食べる事’。
ハンバーガー世代には無い食文化でありますが、津軽のベテラン衆であれば大体ご理解いただける夏の食事の一コマであります。
そのままでは塩っ辛い鮭・マスの端をかじりながら、氷水でサラサラになったご飯を口に駆け込むのは、暑い盛りにはなかなか乙なものであります。
よく関西から起こしになられた方々がホテルなどに宿泊、または転勤されて青森で朝食に出る鮭やマスを召し上がって「何であんなに塩辛いんやろ?」などとおっしゃりますが、それはやはり鮭・マスの食べ方をご存じない、西日本には鮭・マスが取れないという事が文化の違いでしょうか?
鮭・マスが塩辛いのは保存性を高めるのには仕方の無いことですし、塩辛ければ塩辛いなりの食べ方というのが御座いますのでその辺は食文化でありますね。今では冷凍技術も進化し、甘塩の紅鮭なども有りますので、そちらは塩辛さを気にせず食べれて現代人向きでありましょう。
もしも青森県人が冬の最中に大阪近辺にお邪魔して普通にスーパーなどで河豚のお刺身が売っているのをご覧になれば「へえ~?」と驚く事でしょう。青森でも河豚は水揚げされますが、スーパーなどにパックで薄造りしている河豚刺しは見かけることはありませんね。
{陸奥湾産バフンウニ。濃厚な甘味が特徴です。}
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行事も薄らいだ近年では、お盆時期にお墓参りや親戚周りなどをする習慣も無くなりつつあるようですが、自分などはまだまだその習慣が少しばかりはあるものです。
勿論昔に比べれば人が集まる数も激減してしまい、みんなで夏にワイワイガヤガヤという感じではなくなってきたものです。
父方・母方20人ずつの従兄弟がいて、自分も含めて40人。その両親などを加えるとかなりの数の親戚数でありますが、一度に揃う事は今ではまったく無くなりお盆の風景も変わってきてしまいました。
お盆の頃に食べているものが青森の夏の味覚の代表といえるでしょうか、親戚一堂も集まるのも有って量も品数もそれなりに多いものでしょう。
父方のほうが魚屋、母方のほうが農家でありましたから、先に父方にお邪魔すると、まずはたっぷりの煮しめ。春先に摂った山菜を塩漬けしておいた物を塩抜きして、厚揚げや人参・大根、身欠き鰊・昆布、蕗やワラビ・ゼンマイ・筍などがわんさか入れて煮しめたもの。ミズ(山菜)と数の子合え、酢だこ、茄子の南蛮漬け、ホタテ・烏賊・平目・マグロ刺し、ホヤ、茹でたてのトウモロコシに枝豆、切っただけのトマトとキュウリ、キュウリや茄子の芥子漬け、茗荷の甘酢漬け、蜆の潮汁などなどでしょうか・・・。子供たちと女性人は食事が終わってから持ち寄ったケーキでお茶。旦那衆はダラダラいつまでも飲んでいるものでしょう・・・。
それから母方のほうに行くと、大体同じような感じの料理でありますが、煮しめの身欠き鰊がホタテに代わり、少しばかり刺身物が少なくなり、野菜料理が増え(ササギと糸こんにゃくの炒めものやキュウリ膾など)、蜆汁が茗荷の味噌汁に代わり、ミガキカッパ(身欠き鰊とキュウリを生味噌で食べる)が必ずありました。それから平均年齢が父方より低くなる為、鳥の唐揚げ、スイカなども有りました。
同じく食事が終わってからケーキと缶ジュース。旦那衆は一区切り付いたら‘五人カン(津軽が生んだトランプゲームの最高峰)’が始まり、コップに「チャリン、チャリン」と小銭が音をさせ遊んでいるものでした。
大体平均すると身内が集まると10品ほどの料理が用意され、普段でも7~8品はおかずは用意されているものでしょう。
青森では普通の食事風景でも、都会の方々には贅沢に見えるものらしいです。
地方と都市部では所得が格段の差があるのに、食事など普段の生活レベルになるとそれが逆転し、農家や漁業者は贅沢な食生活を送り、ネクタイ族は質素な食事をしているというのも面白いものでしょう。
核家族化が進むと食事風景も一変し、都会化し少人数であればあるほど出来合いもの既製品ばかりで不健康な食事をし、地方の田舎に行って家族が増えるほど健康的で豊かな多種多様な食生活を送っているものでしょう。
それもここ数年急速に平均化し、地方も都市部も同じような食事風景になってきているというのは寂しい心持がするものですね。
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{奥津軽中里のブルーベリーにセミの抜け殻。}

ヤフーブログ‘食の桃源郷 青森’もご覧下さい。
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Commented by しんち at 2013-08-09 15:40 x
こんにちは、はじめまして。
黒石に住む者です。
津軽のお盆のおもてなし料理を検索してたどり着きました。
毎年、盆と正月の料理で悩んでいるのですが、とっても参考になりました。
津軽の料理の紹介、またよろしくお願いします。
Commented by tk-mirai at 2013-08-28 19:30
今晩は。はじめましてしんちさん。
関東関西の料理の勉強は教科書が沢山ありますので、そんなに情報を得るのは難しいことではありませんが、津軽の郷土料理の教科書は、今となっては65歳以上のおば様方しかおりません。その方々と多く接して聞いて歩いて自分で実際に作ることしか津軽の先人たちが築いてきた郷土料理を知る術は無いかもしれません。このブログとリンクして‘世界に誇れる青森の郷土料理’というブログもやっておりますで、参考にしていただければと思います。関東関西の料理を一休みしたとき、津軽の郷土料理の物凄さにある時気付きました。普段から津軽の方々は贅沢な食生活を送っております。ご興味頂ありがとうございました。何かございましたらまたよろしくお願いいたします。未来
by tk-mirai | 2011-08-17 20:29 | Comments(2)

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