‘キジ蕎麦の会’

{マグロの聖地大間から届いた、手前が雉。奥の足つきが山鳥}
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ここ三年ほど、12月近くなると、‘キジ蕎麦の会’なるものが、当店で催されております。
青森県の野生のキジと山鳥を、鉄砲を使って狩猟し、それで出汁をとり、青森県は野菜生産地として最適なむつは横浜町に‘常陸秋蕎麦’をお客さまが趣味で栽培し、その新そば収穫祭で、キジ蕎麦を食べるという事が、会の趣旨であります。
はじめ数人のお蕎麦の会の主催者の方々とお店でお話をしていたら、「10月のむつ市での高橋さんの(広島は達磨のお蕎麦屋さん。ここ6年ほど蕎麦会をむつで開催している。)蕎麦会もいいけど。青森市でも出来ないかね。」とか、自分の質問で、「どうして、むつでの蕎麦会なんですか?青森市のほうが人も集めやすいでしょうに?」の答えに、「もともと下北(むつ市など)は、主催者メンバーの出身地だし、蕎麦を食べる習慣が昔からあったんですよ。でも、今のように冷たいお蕎麦でなく、下北で蕎麦って言ったら、温かいそばの事。冷たい蕎麦を食べる習慣は無かったんですよ。」と・・・・・。
{下北は脇野沢村のイノシシ肉}
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「それじゃ~、むつで蕎麦って、どんな蕎麦ですか?その頃は?」
「うち等が小さい時は、その都度蕎麦を打って食べる事は無く、冬につなぎも何も無く、そば粉100パーセントで黒い蕎麦をまとめて茹でて、1人分ずつ丸めて箱に入れて外に置き、山鳥とかキジで出汁をとった熱い出汁にその茹で置きした蕎麦を入れて食べたもんですよ。」
「お話聞いてるだけで美味しそうですね。」
「いや~、つなぎもないし、茹で置きした黒い蕎麦で、ぶつぶつ切れて、そばって言うよりもお粥みたいのを啜って食べたものですよ。」
「んん~。食べてみたいですね。横浜町に蕎麦も植えてるみたいですし・・・・。」
などなど話をしているうちに、「じゃ~、やってみましょうか?」と開催する事になりました。
ここが青森のすごい所で、20~30分話をしているだけで、いとも容易く、「キジ蕎麦をやりましょう。」といえるところが、都市部では不可能な事でしょう。
趣味でお蕎麦を植えていて、収穫量が「200~300キロ採れた。」とか、「誰かに頼めば、キジか山鳥は手に入るでしょう。」と、さらっと言えるところが青森県の懐の深さを物語っているものです。
東京や大阪などのコンクリートジャングルで飲んでいても、この発想自体出てこないものですね。
{脇野沢の舞茸}
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そこで、主催者の方が下北や南部方面からキジと山鳥を手配し、自分が出汁を取り、温かいキジ蕎麦を・・・・。
むつの蕎麦会主催者でもあり、横浜町にお蕎麦を植えている方でもあり、わざわざ広島まで足を運び、かの有名な高橋邦弘蕎麦名人の雪花山房(せっかさんぼう)達磨の蕎麦打ち教室までそば打ちを学びに行った方が、冷たいお蕎麦を準備する事になりました。
そのほか、蕎麦が出来るまでの料理を5品ほどを自分が用意させていただきました。
この料理の中も、「全て青森県産で・・・。」という事で、川内町の‘一球入魂南瓜’(一蔓に一玉だけ栽培)や脇野沢村のイノシシ肉・舞茸、板柳町のマコモタケ。津軽海峡は大畑のマグロ・大間町のマグロブッセなどを揃えてキジ蕎麦会を行っています。
{市場価格3000円も超える、下北は川内の一球入魂南瓜。}
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温かいおそばと冷たいお蕎麦では、お蕎麦の打ち方を変えなければいけません。その為、キジの出汁を用意する自分が、出汁に合わせてお蕎麦を打ち、冷たいほうを主催者の方が打つ事になっております。
主催者の方は、高橋さん直伝のニ八蕎麦と直伝のかえしのそばつゆ。
自分はお蕎麦はまったくの独学の為、日本料理の知識と技をアレンジして温かい蕎麦用に打たせていただいております。
専門店のお蕎麦屋さんでも、温蕎麦と冷蕎麦を打ち分けているとは聞いた事はありません。もちろん冷か温かどちらが出るかどうかも分らない物を打っておけるはずも無く、用意してロスが出たりと商売上は打ち分けるのはいい事ではありませんので仕方が無い事でしょう。ですから、普段から、「このお蕎麦屋さんの蕎麦は温用か、冷用か?」を把握してご注文する事をお勧めいたします。
メニューにお蕎麦のほか、親子丼やカレー、ラーメン・カツ丼があるお店は温蕎麦をお勧めいたします。
お蕎麦のメニューのほかに、つまみ程度のお品があるところは、冷蕎麦をお勧めいたします。その様なお店で、間違ってもカレー蕎麦などはメニューに乗っていても召し上がらない事をお勧めいたします。そば粉の比率が高いお蕎麦にカレーはまったく合いません。
{横浜町産常陸秋蕎麦と五所川原ネバリゴシ小麦の新そばをゆでる。}
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キジそば用には、少しつなぎの小麦粉の比率を高くいたします。普段お店では、そば粉10に小麦粉1の十一蕎麦をお出ししておりますが、この日ばかりは、そば粉が6~7に小麦粉が3~4加えます。それは、そのときのそば粉の状況を見てから、香りはどうか、水分保持率はどうかなどを確かめてから配合は決めて打たせていただいております。
なぜ、温かいお蕎麦はつなぎの比率を高くするかというと、お蕎麦を一度茹でて水に取り、表面のヌメリを取り引き締めますが、再び熱い湯にくぐらせ、どんぶりに盛り熱い出汁を掛けてと3回温かい液体にあたり、最後の3回目は、食べ終えるまでは暫く温かい出汁の中にお蕎麦が居る為、そば粉の比率が高いとすぐ柔らかくなり食感も良くなくぶつぶつと切れ、そして、鰹出汁の醤油味の汁の香りと蕎麦の香りは冷たい時はベストマッチするのに、熱い醤油出汁と蕎麦の香りは喧嘩いたします。その為、お蕎麦よりも切れにくく香りも少ない小麦粉を多くいたします。
{イノシシ汁。十和田の牛蒡、黒石の金時人参、脇野沢の舞茸、三戸の糸こんにゃくなどを入れて。}
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毎年その時期にキジや山鳥を調理させていただいておりますが、いくら料理を仕事としている自分でも、年に何度も野鳥を調理出来るわけではありません。
春に山菜を採りに山へ向かえば、途中、キジが走っていたり山鳥が飛び去ったりと、ちょくちょくありますが鉄砲で撃つことはいたしませんし、鉄砲自体自分は持っていません。
フレンチやイタリアンなどの洋食では、ジビエと称して鳩やウサギなどを出しますが、国産物は少ないようで、天然のキジや山鳥という訳にはいかないでしょう。たまに、料理屋さんでは、青首といって天然物の鴨を出したりはありますが・・・・。
最初の年は、キジも山鳥も羽が付いた状態でお店に届き、羽をむしるのに慣れておらず、ビリビリッ、ビリビリッの音と感触に背筋に電気が走るような思いをしながら調理をいたしました。
次の年からは、「すいません。羽だけは取って送ってくれませんか?」と頼み込み、切ない思いをせずにキジ出汁が取れました。
{黄色い液体が雉と山鳥の脂。脂は少なくとも濃厚な味がいたします。}
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キジ蕎麦会当日は、朝から出汁を取りはじめ、味が凝縮するまで煮詰めていくのですが、毎年の事ながらキジや山鳥の出汁は非常にあっさりしていながら濃く深く、野趣溢れる味わいは後を引き、美味しいの一言です。スープを一口飲むと、ふわっと鼻に香りが差し込み、旨みと熱がじわじわと体に広がり、ぽかぽかと暖かくなります。豚や牛は鍋に仕立てても、体がただ温まるだけですが、キジ・山鳥の出汁やイノシシ・馬の鍋は、じわ~と体の血液に熱が伝わって行くのがわかります。
とても贅沢な会を催しておりますが、これも青森県という自然と食材に恵まれた土地に居ればこそです。
ちなみに献立の内容は
前菜 一球入魂南瓜煮 青森市半熟ほんたまご 中里産花豆蜜煮 
    津軽海峡スルメ烏賊鮨 板柳産アスパラ菜ゴマ醤油掛け
    黒石産金時人参梅煮 佐井村産ジャンボ椎茸塩焼き
御碗 イノシシ汁
御刺身 津軽海峡本マグロ 真ソイ 自家製引き上げ湯葉
冷蕎麦    手打ちの冷たいお蕎麦
焼き物 陸奥湾産メダイ田酒大吟醸酒粕焼 板柳産マコモタケ煮
肴   弘前産そばもやしと津軽海峡焼き石鯛和え
温蕎麦 雉・山鳥蕎麦
菓子  マグロブッセ
といった内容で、毎年お蕎麦以外のものは、そのときの気分で変わりますね。
都会ではちょっと無理な献立ですね。
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{岩木川で白鳥にパンの耳をあげる。}

ヤフーブログ‘食の超大国青森’もご覧下さい。
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Commented by 秀人 at 2010-01-28 21:40 x
本当に勉強になります!!いつもすごいですね~
Commented by tk-mirai at 2010-01-30 13:12
秀人さんこんにちは。
勉強になるって程の事は無いと思いますので、
のんびりとお気軽に見てやってください。
by tk-mirai | 2010-01-19 15:36 | Comments(2)

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